2020年にForecast Techは普及する―予測の活用事例と課題感を、注目企業が語る(後編)

2019年12月5日、テクノロジーを用いて予測分析を行う「Forecast Tech」(フォーキャストテック)の最前線を担う企業が登壇した初めてのカンファレンス「Forecast Tech Conference 2019」が開催されました。

本記事では、イベント後半の模様をご紹介します。(前編の記事はこちら

パネルディスカッション「注目スタートアップ3社が語る、最前線のForecast Techと導入現場のリアルとは」

パネルディスカッションでは、ファッションなど人の感性を解析し販売予測などを行う株式会社SENSYの渡辺氏、為替や金利などの価格を予測し金融機関を中心に導入されるAlpacaJapan株式会社の北山氏、排泄タイミングを予測し介護などのシーンで活用されるトリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社の中西氏と、それぞれ違う分野で予測サービスを展開するスタートアップ3社にお集まりいただき、各社が予測を実現している強みや課題について語っていただきました。

モデレーターは投資信託のデジタルトランスフォーメーションを進めるロボット投信株式会社の野口氏に、会場からの質問を随時受け付けながら進行していただきました。

各社の技術的な強みとは?

野口:最初のテーマは、「各社の予測技術は何が画期的なのか」。技術的な観点から、それぞれお答えいただけますか?

渡辺:弊社が取り組んでいるのは、「お客様一人ひとりの行動予測を積み上げる」という予測方法です。

渡辺: 明日売れる商品を予測するのに、「どういうタイミングで来店し、どういう商品を買いたいか」というお客様の行動分析を経て、商品の販売予測を行います。単純に膨大な計算量が必要になるので、行動分析を効率的に積み上げる工夫をしておりまして、その点が技術的優位性になるかと思います。 もう一つは、購買データの蓄積量です。お客様一人ひとりの分析をやろうとしても、小売企業の方々はデータを蓄積していないことが多い。弊社は、全国の商品の1%に相当するパブリックな購買データを集めておりますので、お力になれることも多いと思います。

野口:会場から質問が来ています。渡辺さんがAIで予測分析に取り組もうとしたきっかけは何でしょうか?

野口 哲氏
ロボット投信株式会社 代表取締役社長

「金融を変える。ロボットが変える。」をミッションに投資信託のデジタルトランスフォーメーションを進めるロボット投信を2016年に創業。2007年にSBIホールディングスへ入社し、決済・暗号・Webマーケティングを担当。2011年からピクテ投信投資顧問にて、公募株式投信のデータ解析・マーケット分析業務に従事。紙を前提にした複雑な投資信託バリューチェーンの変革に挑む。

※野口氏のインタビュー記事はこちら

渡辺:2008年くらいにコンサルタントとしてアパレル企業を訪問した際、倉庫に膨大な在庫の山があったのですが、その半分くらいが廃棄処分されるということを目の当たりにしたのが直接のきっかけですね。大学時代はAIを研究していたので、こういう業界の課題をAIで解決できないか、お客様と商品のミスマッチを解決できないかと考えました。

野口:続いてAlpacaの北山さん。先月、新商品のAlpaca Forecast Cloudをリリースされましたね。おめでとうございます。

北山:ありがとうございます!さて、弊社の強みですが、あえていうなら「サイエンスの強さ」となるでしょうか。Alpacaは基本的にサイエンスの会社でして、誰もが匙を投げるような難しい課題にあえて取り組む、そういうチャレンジを事業にしています。

たとえばAlpaca Forecast Cloudの場合、私達が注目したのが、ティック、ミリ秒単位で発生する為替の細かい値動きです。為替は人間の需給や思惑など、あらゆる情報が集まってパターンが形成されている。人間にはもう予測できない領域ですが、私達は深層学習のエンジンを用いて予測モデルを作り、この分野にアプローチしています。

野口:最後にトリプル・ダブリュー・ジャパンの中西さん。ヘルスケア分野での予測分析を手掛けていらっしゃいます。

中西:排泄予測デバイスの「DFree」を販売しております。排泄はここにいらっしゃる皆さん全員に関係する問題ですね。画期的な点を一言でいえば、超音波技術をウェアラブルデバイスに落とし込んだ、という点になります。

野口:蓄積したデータを解析している点と、超音波技術の2つを合わせて使っている点、他社さんが真似できない強みですね。

予測分析サービスの課題感

野口:続いて、「将来予測の現場にいるからこそわかる、予測サービス導入の課題」。まずSENSYさんですが、会場から「分析はオンライン限定なのか、それともリアルな店舗も分析できるのか」と質問が来ています。

渡辺:両方やっていますが、販売のボリュームはやはりリアルなチャネルが8割、9割ということが世の中の小売の現状かなと思っていますので、メインはリアルです。オンラインのデータは補完的に使っています。

野口:ありがとうございます。ちなみに、非定型データは扱われているのでしょうか?

渡辺:扱えます。アパレル業界では、AI的に言えば商品の特徴量は、シーズンごとに変わります。今年投入するこの商品が、過去のどの商品と売れ行きパターンが近くなるかを予測するには、画像や文章などの非定型データの分析にも取り組まざるを得ません。

渡辺 祐樹氏
株式会社SENSY  代表取締役CEO
慶應義塾大学理工学部システム工学専攻、人工知能アルゴリズム研究に従事。株式会社フォーバルを経て、IBMビジネスコンサルティングサービスにて戦略コンサルタントとして製造業・サービス業の事業戦略策定、組織再編、業務変革などに従事しながら、公認会計士資格を1年で取得。2011年カラフル・ボード株式会社(現SENSY)を創業。

野口:アパレル以外の小売業でも展開可能なんでしょうか?

渡辺:はい。今年の夏からスーパーやドラッグストアで需要予測のプロジェクトが始まっています。アパレルと同じように、あるお客さんのスーパーへの来店タイミングなどの行動予測を積み上げていくと、明日用意しておくべき豆腐の数などが予想できる。これまでどんぶり勘定で行っていたプロセスが変わります。

野口:続いてAlpacaさんにお伺いしたいのですが、これまで金融機関に導入する際に課題はありましたか?

北山:収益貢献についての、お客様との認識の擦り合わせですね。 たとえば製造業の需給予測の場合は、人間でもある程度予想できる領域をAIでサポートして精度向上を図る、というイメージになるかと思います。しかし、マーケット予測の場合、当たるも八卦当たらぬも八卦の世界で、50%の予測精度を少し上げて60%にする、という取り組みになる。なので、導入した時に「60%の精度にして、どれくらい利益が出るのか?」という点をお客様にご理解いただかなければなりません。

北山 朝也氏
AlpacaJapan株式会社 CPO/Head of R&D

10年間ソニーに在籍し、PlayStationのサポートチームのマネージャーとしてゲームタイトル開発者とPlayStation開発チームの橋渡しを行う。2015年よりAlpacaに参画し、金融機関との様々なプロジェクトを企画・実施、金融 X AIでビジネスをつくることに日々もがく。現在はChief Product OfficerとしてAlpacaのプロダクトを統括。慶應義塾大学・慶應義塾大学大学院卒、2008年度IPA未踏スーパークリエイター。

※北山氏のインタビュー記事はこちら

野口:続いてトリプルダブリューさん。排泄予測は、今どのような場所で活用が広がっているでしょうか?

中西 敦士氏
トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社 代表取締役

慶應義塾大学商学部卒。大手企業向けのヘルスケアを含む新規事業立ち上げのコンサルティング業務に従事。その後、青年海外協力隊でフィリピンに派遣。2013年よりUC Berkeleyに留学し、2014年に米国にてTriple Wを設立。2015年に当社設立。
著書:「10分後にうんこが出ます-排泄予知デバイス開発物語-」 2016年・新潮社

中西:BtoB領域で言うと、リハビリ病院や介護施設といった施設での導入が中心ですね。ですね。排泄は人間に絶対必要なイベントですが、これを予測できると、ライフスタイルにも大きな影響が出ると思います。

野口:会場から、「大きい方」は予測できますかという質問が来ています。

中西:はい。目下開発中です。

Forecast Techスタートアップの将来構想

野口:それでは最後の質問に移ります。「各社の将来ビジョン」ということで、SENSYさんから順番にお願いします。

渡辺:元々、企業の活動と生活者のミスマッチを解決したい、と言う思いでSENSYを創業しました。企業が良かれと思って開発した新商品を、お客様が購入したことを後悔したりとか。これをデータという観点から解決していきたい。 SENSYでは現在、多くのPOSデータをお預かりしています。各企業様の消費者の皆さまをペルソナ化して、データベース化、それを企業内のAIにフィードバックしていく。こうした仕組みが出来始めている段階なので、データ量をさらに増やし、活用の場を広げたいです。

中西:我々の強みは生体センシングと、そこからデータを取ってくる技術です。例えばお腹が減るとか、我々が日常で自分の体から受け取る感覚は非常に多くあります。そこで「どのくらい食べればいいか」といった答えをしっかり数値化するサービスを作りたい。そういったサービスを家庭の中に広げていくことで、家庭のヘルスケアサービスを総合的に底上げしていくことを目指していきたいと考えています。

北山:弊社の場合、パートナーの方と寄り添ってビジョンを達成する会社。なにか難しいことにチャレンジしたいという時に一番力になれる会社になれるように技術を磨いているというところですね。

野口:ちなみに皆さん、プライバシーの観点からデータ収集の際に気をつけている点はありますか?

渡辺:個人情報は外した形でデータを扱っていますが、それでもセンシティブな情報ですので、ISMSを取得するなど、データ管理には細心の注意を払っています。

北山:プライバシーデータは扱っていないのですが、ひとつ気を付けていることがあります。金融データは全てのデータに値段がついておりまして、そうすると、インプットのデータにかかるコストがアウトプットのデータの収益を超過することがあります。

野口:それは分かりますね…。この点、金融の方も共感いただけるんじゃないでしょうか。

北山:なので費用対効果には気をつけていますね。

中西:弊社はプライバシーのデータを使っていますが、逆にそれを気にしすぎると、今度は利便性が落ちてしまいます。そこは、実際ご導入いただく施設に合わせて、完全匿名にするのか、あるいは実名で使うかを選択するようにしています。

野口:最後に総括ということで。3社とも違う領域ですが、データのインプットをもとにして社会にインパクトを与えるビジネスを展開されています。参加者の皆さまは、是非、学びを自社に持ち帰って、「自社ならこんな事ができるんじゃないか」と提案していただければと思います。本日は、ありがとうございました。 〇パネル登壇各社の主要サービス
SENSYMD:お客様一人ひとりの嗜好性や購買タイミングなどを感性としてパーソナル人工知能に学習させ、商品需要予測の精緻化を通じて、追加発注やマークダウンを最適化。

Alpaca Forecast Cloud:機械学習によりリアルタイムティックデータから値動きの短期予測シグナルを生成。

DFree:超音波技術により膀胱内の尿のたまり具合をリアルタイムで計測する、世界初のウェアラブルデバイス。

ファンド・アナリティクス:販売会社の販売員向けに基準価額変動要因分析を提供するASPサービス。日次信託報酬額、日次資金流出入額も併せて提供


まとめ

Forecast Tech研究所による、第一回目のForecast Tech Conference は、様々な分野におけるForecast Techサービスを広く取り上げ、業界の高い可能性を示唆するものとなりました。懇親会の場では、登壇各社がブースを設置して実際のサービスを直接紹介し、意見交換の場としても盛り上がりを見せました。今後も最新の予測サービスや技術を広める場としてForecast Tech Conferenceを定期開催していきたいと思います。

ニュースから企業業績や経済の未来を予測するSaaS型AIサービス「xenoBrain」の仕組み

サービス概要

xenoBrain(ゼノブレイン)
予測対象: 企業業績、業界需要、素材価格
利用データ:ニュース、決算資料
利用事業者:事業会社経営企画、調達部門、営業企画、金融機関など
利用シーン:あらゆる企業評価・経済環境分析シーン
主要利用技術:自然言語処理

Forecast Tech研究所を運営する株式会社xenodata lab.が開発・運営する「ニュースから企業業績や経済の未来を予測する」xenoBrain とはどのようなサービスなのか、技術的な部分も含めてご紹介していきたいと思います。

xenoBrainとは?

 xenoBrainは、経済ニュースや決算情報に含まれる過去の経済事象の連関から企業の利益影響をAIが自動で分析し、業績予測を行うサービスです。世界中で毎日膨大なニュースがリリースされますが、AIを活用することで、そのニュースがどんなことを言っているか自動で抽出し、そこから発生する影響を予測しています。

 例えば、新たな通信規格として5Gサービスが始まるというニュースが出た時に、そのニュースが自社や競合企業にどのような影響を及ぼすかすぐにわかるでしょうか?5Gサービスが開始すると、データセンターの需要が高まる、データセンターの需要が高まると、光ファイバーの需要も伸びる。このように、膨大な経済ニュースを独自のAIで解析し、1つ1つの経済事象間の因果関係を特定することによって、ある事象が起きたとき、どのように経済や産業構造に影響を及ぼすのか、将来の予想に繋げるのがこのサービスです。

※プロダクトの詳細は動画でもご紹介しています、是非ご覧ください

どうやって将来予測を実現しているの?

 それを実現させているのが、特許取得済みの高度な自然言語処理技術であり、ゼノデータ・ラボのコアとなっている技術です。xenoBrain のニュース分析における自然言語処理では、ニュース記事の日本語文章の中から、経済事象に関する記述を情報抽出しています。この経済事象の抽出は、影響シナリオと結びつけるために、area (地域)、item(品目), element(エレメント), predicate(述語)といったラベルごとに、単語単位まで細かく特定する必要があります。 そのために、弊社独自の自然言語処理エンジンを開発、ニュース記事向けの高精度パターンマッチングをしています。

 これらの技術で過去10年間の膨大なニュース記事を解析し、文章から経済事象のつながりを構造化データに変換することで、経済ニュースの因果関係を可視化しています。また、もう一方で企業の決算資料の解析を行い、最新の情報から業績を左右するような要因(社内では「業績ドライバー」と言っています)を自動抽出する解析も行っており、両面で行っているニュース解析と決算解析を組み合わせる事で、今日起きたニュースがどのようなつながりで企業の業績にどのようなインパクトを及ぼすか、予測を実現しています。

今後の展開は?

①未上場企業、海外企業など解析対象の企業を拡大していきます
 来春には未上場企業40万社以上の企業信用調査レポートを解析対象に追加予定。業界初、未上場企業の将来動向を自動予測するサービスが実現します。

②ニュースが企業や経済に及ぼす影響を数値化
 現在は表記できていない、期間(短期・中期・長期)や確度の情報を追加し、より活用しやすい予測情報を提供します。

今後も進化を続けるxenoBrainにご期待ください!

投資信託の予測は可能なのか?最新テクノロジーで投資信託の資産運用を自動化するロボット投信株式会社にインタビュー!

右から、ロボット投信株式会社 代表取締役社長 野口 哲氏と、マーケティング・クオンツチーム マネージング・ディレクター 矢島 桐人氏

Forecast Tech企業インタビュー記事第二弾は、テクノロジーの力で投信回りの会社のオペレーションを良くする様々なサービスを提供する会社、ロボット投信株式会社が投信の予測サービスをリリースする可能性がある事をキャッチし、代表取締役社長の野口 哲氏と、マーケティング ・クオンツチームの マネージング・ディレクターの矢島 桐人氏(以下敬称略、お役職はインタビュー当時)にお話を伺いました。

注目サービス概要

ファンド・アナリティクス
解析対象:投資信託の値動きの理由を可視化
※値動きをシミュレーションできる新機能を開発中!
利用事業者:銀行個人部門
利用シーン:銀行窓口にて、個人投資家に投信の状況を説明
主要利用技術:投信データの統計数理分析×AWSなどクラウドベースのシステム構築

ロボット・レポート
解析対象:投資信託の運用結果を解析し、運用報告書などレポートを自動生成
利用事業者:投資信託運用会社
利用シーン: レポート作成業務を自動化する事で低い工数で正確なレポートを早く出すことが可能に
主要利用技術:投信専用CMS×AWSなどクラウドベースのシステム構築

―まずは、ロボット投信という会社について、何を実現する会社なのか教えてください

野口 投信回りの様々なオペレーションを良くするサービスを提供しています。その中でも主要なサービスが、銀行や証券会社といった販売会社の販売員向けに基準価額の変動要因分析を提供する「ファンド・アナリティクス」と、投資信託の月次レポートを自動作成するSaaSの「ロボット・レポート」です。銀行窓口業務や、投信を運用する会社の業務の効率化を行い、最終的には受益者への還元を目指し全員にメリットのある世界を目指しています。

 矢島 投信業界という話だと、運用会社であればアナリストやエコノミストがいて、様々な指標を見ながら分析・予測を行い、「この株・資産を買おう」という判断をし、投資信託を作り運用をしています。そして日本の場合だと投資信託は基本的に販売会社とよばれる銀行や証券会社が売る事になっていて、個人や機関投資家が投資信託を買います。我々は、金融リテラシーの低い個人投資家に対して投資信託の可視化を行い、販売会社のサポート、ひいては投信業界の発展に寄与したいと思っています。ファンド・アナリティクスはこのためのツールで、BtoBto Cの個人投資家向けのサービスになります。また、運用会社という意味では、運用レポート作成などといったオペレーションの自動化によって、予測や分析作業といった運用会社の価値の源泉に対する業務に多く時間を割けるようになってもらいたい、と考えています。それがロボット・レポートで、プロ向けのサービスです。

―基準価額の変動要因分析を提供するファンド・アナリティクスとは、具体的にはどのようなものでしょうか?

野口 投信の中身の値動きを明らかにしていくツールです。これは、過去の値動きを推計しているものなので、Forecast Techというより、むしろ逆側をいっているテックですね(笑)

矢島 投信は、一般の個人が、例えばトヨタ自動車の株と日産の株と、どちらが良いかどちらを買うべきかという事はわからなくても、運用会社のファンドマネージャーと呼ばれるプロに任せて投資が出来るというものです。それはそれで良い事なのですが、一方で株式売買の選定を他人任せにしてしまうので、ブラックボックスになってしまい、なぜ投信の基準価額が上がったのか下がったのか分からない、という状況を作ってしまいます。野口は以前からそこを可視化できるのではないかというアイデアを温めており、2年近く掛けようやく実現できたのがファンド・アナリティクスです。例えば投信の基準価額が下がっているときに、実は原資産は上がっているが、為替が下がっているだけだという事がわかったり、投資信託の透明化に貢献できています。

こちらが実際のファンド・アナリティクスの画面。サンプルでは国内外の債券を運用する「グローバル・ソブリン・オープン」の、3年間の基準価額の変動要因を分析している。基準価額を変動させた要因は、この投信の運用商品である「債券」に加え、「為替」、「分配金」、「信託報酬」に分解して可視化されている。投信の3年間の基準価額の変動は全体で見ると4,839円⇒4,902円と微増だが、通常はなぜそのような結果になったのかまでは投信購入者にはわからない。しかしこの画面を見ると、メインの運用商品である債券の運用成績が非常に良く、為替もプラスに働いており、分配金を出した事で、結果として基準価額が微増となっていることが分かる。

―どのような技術で、基準価格の内訳を出しているんですか?

野口 コアとなる計算部分については、テクノロジー部分はAWSを使用しているだけで、何か真新しい技術を活用しているわけではありません。しかし一般的には広く用いられるようになってきたAWSも金融業界ではまだ浸透しているとは言えず、こういった技術を少し取り入れるだけでも、(ブラックボックス化している投信の値動きを分かりやすく把握したいというお客様の)ニーズを満たすには十分と考えています。当たり前の話ですが、「お客様のニーズを満たすにはどうすればよいのか。どういうテクノロジーが使えるのか」を愚直に考えた点が、ファンド・アナリティクスがお客様に受け入れられている一番の要素だと思います。

投信の「将来の値動き」を確率的に表示する拡張機能を開発中!

―Forecast Techサービスについても開発されていると伺いました。詳しくお伺いできますでしょうか

野口 投資信託というものはただの箱であり、中に個別株や債券やコモディティが入っています。その中身を全て当てなくてはならないという意味では、投信の基準価額の動きを予測する事はできないと考えており、未来の予測を行う予定はありません。また話は少し逸れますが、投信を長期で保有しようという時に、1か月後の上がり下がりで運用していると複利効果が効かなくなるという背景があります。例えば年1%の利回りを365分の1すると1日あたりの利回りは少しにしかならないですが、35年たつと1.8倍くらいになっています。このような長期積立分散という投資ができるようになると、おそらく日本の投資信託のすそ野はもっと広がり、投機的なものではなく地に足のついた資産形成ができるようになると思います。

矢島 ファンド・アナリティクスを銀行の支店の方に利用してもらったときに、「説明のツールとしてとてもわかりやすいけど、次のアクションが取り辛い。どれそれの要因で上がったから、だから何なのか?売らずに保有し続けるようアドバイスすべきなのか、売って別の投信をお勧めすべきなのか」というフィードバックを数多くいただきました。前述の通り投信は様々な商品が入った箱なので値動きを当てるという事はできないと思っていますが、販売会社の販売の担い手のセールストークに貢献するような、将来的な値動きの可視化をサポートする「シミュレーション」ツールは出来るだろうと考えています。ファンド・アナリティクスのモデルをベースに、将来の投資信託の値動き確率的に表示する機能です。

実際に開発中の画面を見せていただいたところ、過去の値動きの延長に、将来の値動きの幅が雲のように示され、最も濃い部分は最も確率が高いことが視覚的にわかるようになっていました!

人間のエコノミストの考えをブレイクダウンし、期待リターンの予測を自動化するというチャレンジ

野口 現在開発中の機能は、コンプライアンスの観点から「今後上がります」などが言えないという事情もあり、投信の中身の一部、例えば一年後の日経平均の予測値や為替レートの値などを利用者がインプットして利用するものを想定しています。しかし、理論的には株価は利益×投資家の期待値で動きます。期待値というのは予測できないものですが、利益の予測は、例えば企業の業績や、基本的に国は企業の集合体になっているので、国の成長率から逆算して、日本の株価全体の成長率を分析するという手法があります。世界銀行やIMFが四半期に一度GDPの予測を出しており、人間のエコノミストはそのようなデータなどを用いて日本株全体の期待リターンを算出します。そしてそのエコノミストの算出した期待リターンを利用して、ポートフォリオの資産配分を決めたりするのですが、もしそのエコノミストの作業が自動化できれば、その後はもうブラックリッターマンなど決まった手法があるので、全て自動化できます。  

 今出している主力サービス「ロボット・レポート」ですと、定型的な仕事がロボットに置き換わるというもので、それ自体は色んな所であると思いますが、エコノミストが行う期待リターンの予測業務を自動化するという事はチャレンジングで面白いと思っています。予測のやり方には決まったルールがあるので、そのルールに基づいて予測を算出すれば自動化する事が可能だと思っています。

―エコノミストの考えをブレイクダウンして、同じ計算をシステムで自動化するという事ですか。それはすごいですね!

野口 僕たちがすごいというよりは、素材となるデータを作ってくれているような日本銀行やIMF、世界銀行などがものすごい労力をかけて統計を作成し、結果をフィードしてくれている仕組みがあり、自動でデータを取れる仕組みがあって実現するので、彼らがすごいんです。昔、ホームページが無かったころはどうしていたのかなと思いますね笑

―最後に、新しい分野Forecast Techについての今後の期待など、一言いただけますでしょうか。

野口 困難なforecastへの挑戦こそテクノロジーの役目であり、資産運用の常識に囚われない新しい可能性を様々な形で探っていきたい

筆者コメント
 少数超精鋭のクオンツ、エンジニア部隊を持つロボット投信社の、金融工学に精通したお話を伺う事ができました。近い将来エコノミストの業務もテクノロジーの力で置き換わっていくのでしょうか?同社の今後のForecast Techの展開が楽しみです!ロボット投信株式会社 野口様、矢島様、大変ありがとうございました!

先端技術を磨き、あらゆるマーケットの予測を実現するデータサイエンス集団:AlpacaJapan株式会社の予測サービスを掘り下げる

Forecast Tech企業インタビュー記事第一弾は、データサイエンスの多様な技術を駆使し、プロ向けにマーケット予測を提供する会社、AlpacaJapan株式会社(以下、「AlpacaJapan」) CPO/Head of R&Dである北山 朝也氏(お役職はインタビュー当時)に、AlpacaJapanが実現する予測サービスの詳細について語っていただきました。

提供サービス概要

Alpaca Forecast
予測対象:主要為替通貨ペア
利用事業者:機関投資家、事業会社、ヘッジファンド
利用シーン:為替トレーディング
主要利用技術:ディープラーニング、機械学習

Alpaca Radar
予測対象: 日本株、米国株、海外債券
利用事業者:機関投資家、ヘッジファンド
利用シーン:資産運用における収益獲得、アセットアロケーション調整
主要利用技術:ディープラーニング、機械学習

―まずはAlpacaJapanという会社について、何を実現する会社なのか教えてください

 データサイエンス技術を使ってマーケットの予測をする会社です。ディープラーニングが主ですが、ディープラーニングだけにこだわらず、ありとあらゆる最新技術を使って予測しています。

 サービスの提供先は主に機関投資家で、ビジネスモデルは大きく2つ分けてあります。一つはお客様と共同研究をする形で技術を提供するモデル、もう一つは自社が作ったシグナルを月額で提供するモデルで、「Alpaca Forecast」と「Alpaca Radar」という2つのサービスがあります。Alpaca Forecastは、5分~60分以内のプライスを予測するサービスで、Bloomberg端末上App storeと呼ばれるアプリストアやWebで提供しています。常に画面を開きっぱなしにして使っていただくイメージですね。Alpaca Radarは最長3ヶ月の様々なアセットの予測をするサービスで、今は毎朝のメールでレポートを提供しています。

ヘッジすべきリスクを収益のチャンスへ変換

― シグナルは主にどのようなシーンで利用されているのでしょうか

  Alpaca Forecastは為替のプロップトレーダー(自己売買)以外にも細かいニーズがあり、為替ヘッジのオペレーションのためなどにも使っていただいています。例えば元々100億円分のドルを購入したい場合購入タイミングを1時間ごとに10億円ずつなど均等にずらしていくことで、平均価格で購入するオペレーションをしていたが、Alpaca Forecastを導入する事で、タイミングを見定めて為替変換する事で収益につなげられるような事例もでています。

―どのような仕組みで予測を実現しているのですか?

 Alpaca Forecastは「ティック」、つまり1秒間に100回など非常に細かい粒度で発生する大量のプライスのビットとアスクのデータの分布や偏りを分析する事で需給を予測しています。技術的にはディープラーニングを使い、「こういうパターンが発生している時は上がる」というような需給の情報を学習し、値動きを予測しています。ニューラルネットワークとしては、画像認識で良く使うCNN(畳み込みニューラルネットワーク)技術を使い時系列用に応用しています。

世界中のグローバルアセットから、安定的な先行指数を自動選出して予測を算出

―次に長期予測サービス、Alpaca Radarについて教えてください

  Alpaca Forecastが5分~60分以内のプライスを予測するのに対し、Alpaca Radarは最長3ヶ月の様々なアセットの予測を対象にしています。具体的には日本株、米株、海外債券などですが、特に債券マーケットは株・為替マーケットより合理的に動くという印象を持っています。債券は債券先物などでトレードできますが、予測を使ったトレーディングで収益を追求するだけでなく、ポートフォリオに対するリスクヘッジとしての使い方なども多いです。債券予測は重要な基礎技術として特に磨きをかけています。

 仕組みとしては、世界中のあらゆるマーケットデータから、対象とする金利指数に対して安定的に動作する先行指数を探索し、予測モデルを自動的に構築するシステムを作っています。直近10年間で先行指数として最も安定的にワークしたものを選び、その効果を足し合わせて予測を作っています。

―予測精度を上げるためにはどんな事をされていますか?

 大量の仮説を立てて、一つ一つ潰すという事をしています。例えばティックデータもスプレッドやBID/ASKをどういう分布を仮定して学習させるか様々なアイディアがあります。値動きを学ばせるときに、モデルに対して「どういう風にマーケットを見るべきか」という仮定を置かなければいけません。本来、ディープラーニングの強みはそのような仮定を置かずとも仮定自体を発見するという強みがあるのですが、マーケット予測におけるディープラーニングでは、画像認識などと違いデータ量が少ないため、どのように世界を切り取るかという仮定を人間が考えないといけません。

世界一の技術があればビジネスモデルは後からついてくる

―今後の方向性について教えてください

 今後は予測モデルのブラッシュアップと、未来に向けてありとあらゆるアセットを予測できる技術を揃えていくというのが我々の第一目標ですね。世界一の技術を持ってしまえばビジネスモデルはあとからついてくるという思想で、技術を磨く事に全ベットしているような会社です。

―最後に、新しい分野Forecast Techについての今後の期待など、一言いただけますでしょうか。

 Forecast Techには、元々予測できているものについて、さらに精度を高めていくものと、元々予測出来ていないものが予測可能になるものと2種類あります。事業会社は、「これを予測できたら本当に利益になる」という分野を抱えているのではないかと思いますが、その分野の予測が実際に出来てきたときに、内部オペレーションの整備に数年かかるような場合もあり、「長い目で見たときにこの事業が発展していくので、先行投資しておこう」という判断をする事はトップのビジョンが必要で、実際とても難しい事だと思いますが、そのような取り組みにチャレンジする会社がどれくらい出てくるかがForecast Techが盛り上がるかどうかのポイントになると思います。

筆者コメント
データサイエンスの力でありとあらゆるアセットの高精度な予測に挑むAlpacaJapan社から、予測を実現する技術部分など深いお話を伺う事ができました。「ビジネスモデルは後からついてくる」と、ひたすら技術に磨きをかける同社の予測テクノロジーに今後も注目していきたいと思います。AlpacaJapan 北山様、大変ありがとうございました!

【iPhone 11 Pro 世界最速分解レポート】基幹部品への村田製作所製品の採用が大幅増、フラッシュストレージは東芝からSK hynixへ変更か

2019年9月20日、「iPhone 11」、 「iPhone 11 Pro」 、 「iPhone11 Pro Max」の3機種が新たに発売された。スマートフォンはいまや人々の生活インフラとなり、毎年新機能が盛り込まれるiPhoneの新製品発売は大きな注目を集める。

xenodata lab.(ゼノデータ・ラボ)では、新型iPhoneが半導体業界をはじめとしたサプライチェーンに与える影響を分析すべく、発売当日の本日、「iPhone 11 Pro」を独自に分解。前年モデルとの比較により、部品構成の変化から関連企業への影響を分析した。(※本記事ではiPhone 11 ProとiPhoneXSを比較した。)

事前情報からの着眼点

1.三眼カメラの採用

photo

iPhone XSでは縦に2つ並んでいたカメラが、iPhone 11 Proでは3つ搭載に増えるという大きな外観の変化がまず指摘される。それに伴い、望遠、広角、超広角の様々な鮮明な写真の撮影が可能となり、暗闇の撮影でもナイトモードで今まで以上に明るく撮影することができるようになるという。

特筆すべき変化としては、絞り値:f/2.4の超広角撮影が可能となったことで、Apple JapanもYoutubeの公式アカウントで、その変化を大きくアピールしている。

2.A13チップの内蔵

米大手メディアBloombergは、台湾半導体大手TSMCが、iPhone 11向けに新世代チップ『A13 Bionic chips』の生産を開始したと、今年5月に報じていたが、2019年モデルにはこれが組み込まれることになる。

Wiredによると、Appleは日本時間9月11日に行われたApple Special Eventにおいて、新プロセッサー『A13 Bionic chips』の特性について触れ、トランジスタ数の増加や6コアCPU、GPU性能の改善に加え、ニューラルネットワークエンジンがそれぞれ高速化されるだけでなく、iPhoneシリーズの長年の課題であるバッテリー性能についても、省電力性の向上により改善が見込まれると伝えている。

3.U1チップの内蔵

上記に加えて、iPhone 11系より初めて新型チップ「U1」が内蔵される。U1チップは超広帯域無線(UWB)を活用することのできる技術で、端末同士の空間認識能力の向上を見込まれ、 複数の端末間で無線通信を行うAirdropの通信制度及び速度の大幅な向上が見込まれるApple社は発表している

以上3点が、iPhone 11系の事前情報からの注目点といえるだろう。

iPhone 11 Proを即日分解、XSと比較

弊社ではiPhone 11 Pro発売日にあたる2019年9月20日の本日、独自に端末を分解し、前作iPhoneXSとの部品構成の差異を分析することで、iPhoneのサプライチェーン企業への影響を調査した。

ロジックボード(表面)

iPhoneXS画像はiFixit社の分解レポートより引用

ロジックボード(表面)での注目点は、何と言っても大きな面積を占めるフラッシュストレージについて、iPhoneXSでは東芝製品が採用されていたが、iPhone 11 ProではSK hynix製品へと置き換えられている点が挙げられるだろう。

ロジックボード(裏面)

iPhoneXS画像はiFixit社の分解レポートより引用

ロジックボード(裏面)の特徴としては、今作からWi-fi6(IEEE802.11ax)へとアップグレードされたWifiモジュールとして村田製品が採用されている点がある。また、通信速度の向上に寄与するMIMOモジュールについても村田製品が採用されており、村田製作所の存在感が際立つ内容となっている。Apple A13チップは確認できたものの、詳細な内部構造については現時点では確認できていない。

また、ロジックボード全体として小型化、軽量化が進んでいることも特徴として指摘できるだろう。

RFボード

iPhoneXS画像はiFixit社の分解レポートより引用

ロジックボード(裏面)と同様に、RFボードについても、村田製品の採用が増えていることがわかる。また、Intelプロセッサと隣接している黒い正方形については、これが従前より注目を集めていたU1チップではないかと弊社では予想した。

その他にiPhone 11 Proに特徴的な構成部品をまとめて最後にまとめて列挙した。三眼カメラモジュール、4K対応のインカメラモジュールはいずれもコンパクトな形状。Taptic EngineはXSから小型化が進み、それに隣接するラウドスピーカーでは、映画等でよく用いられる「Dolby Atmos」技術が採用されている。

分解結果からわかるサプライチェーンへの影響

基幹部品に村田製作所の製品が大幅に増加

ロジックボードやRFボードの分析からわかるように、iPhone 11系よりバージョンアップされたWi-fi module USIや通信速度向上に寄与するMIMO DSMをはじめ、iPhoneの心臓部ともいえる基幹部品に採用される村田製作所(TSE:6981)の製品がiPhone XSに比べ大幅に増加したことが見て取れる。

日本の半導体産業が世界シェアを大幅に落とした直近の30年の間にも、「独り勝ち」の様相を呈し業績を伸ばし続けた村田製作所であるが、前年製品に比したiPhone 11への供給部品点数の増加は、今後の業績へのポジティブなインプリケーションが非常に大きいと想定される。

フラッシュストレージは東芝からSK Hynixへ変更か

iPhone XSのロジックボードでは東芝のフラッシュストレージが採用されていたが、iPhone 11 Proでは類似の場所に SK HynixのFlashストレージが採用されていることが確認できた。東芝製品の未使用が確認できているわけではないが、サプライヤー変更が事実であれば東芝及び東芝へストレージ関連製品を供給する企業にとっては大きな打撃となる可能性がある。

3D Touch廃止の影響は

分解結果からのインプリケーションではないが、従前の想定通り、iPhone 11 ProにおいてはXSで搭載された3D Touchは廃止された。これにより、フォースセンサー大手NISSHA(TSE:7915)及びそのベースフイルムを提供していた日東電工(TSE:6988)等は部品供給が途絶えると考えられる

三眼カメラはスマートフォンのデファクトスタンダードとなるか

今回のiPhone 11 Proの発表に際しては、その斬新なビジュアルも相俟って、三眼カメラが大きな話題を呼んだ。三眼カメラ自体は、既にXperia1、GalaxyS10、HUAWEI P30等の機種で既に市場投入されており、この点iPhoneはいわば後発の位置づけとなる。

コンパクトデジタルカメラ市場を完全に飲み込んだスマートフォンカメラの高性能化は、カメラアプリやSNSの流行も追い風となって今後もさらに進むものと想定され、三眼カメラがスマートフォンのデファクトスタンダードとなる可能性は十分にあると考える。

三眼カメラのモジュールについては、シャープ、韓国LG、中国OFILMグループ等での生産が確認されているが、画像処理のコア機能を担うCMOSセンサーについては、SONYの寡占状態といって過言ではない。カメラ機能の高性能化にはセンサーの性能向上が不可欠であり、三眼カメラが流行すれば、SONY(TSE:6758)には強い追い風となると考えられる。

今回の分解からの分析は以上だが、最も注目すべき点としては、やはり基幹部品への村田製品の増加、そして東芝製品のリプレイスだろう。

iPhoneについては、サプライチェーンの分析と同様に発売後の販売動向にも大きな注目が集まり、各産業への波及影響も大きいため、xenodata lab.では継続してレポートを発行する予定である。

AIによる将来予測『Forecast tech』最新トレンド

いつもxenolaboをご覧いただき、ありがとうございます。

先日、AIによる将来予測サービス『Forecast tech』領域のカオスマップをプレスリリースとして発表したところ、非常に多くの反響を頂き、10を超えるメディアにも取り上げて頂きました。「より詳細を知りたい」という多くもお声を頂きましたので、詳細レポートの作成に至った次第です。

詳細資料のダウンロード

本レポートでは、AIによる将来予測『Forecast tech』の実用化事例について、需給予測、株価予測、経済リスク、サイバーセキュリティリスク、犯罪、予防医療等、米国の事例を中心に、20以上の企業を取り上げ、幅広く紹介しています。カオスマップの更新と併せて、詳細レポートも、今後も発行を予定しておりますので、次回の発行時にはフォームに入力していただいたメールアドレスにご連絡させていただこうと考えております。

ホルムズ海峡問題の長期化リスクに備える

ホルムズ海峡問題で中東の地政学リスクが増大

ホルムズ海峡問題を巡り、世界的に緊張が高まっている。2019年6月17日には日本のタンカーが攻撃を受け、さらに同年7月20日には英国のタンカーがイランにより拿捕されたと報じられた。こうした事態を受け、トランプ米政権は、中東地域に約1000人の米兵を追加派遣することを決め、英国は欧州各国と共同で、ホルムズ海峡付近を航行する船舶の安全を確保する作戦を展開する方針を発表した。

ホルムズ海峡はエネルギー資源の生命線

ホルムズ海峡は中東産の原油や天然ガスを運び出すうえで、「チョークポイント」(海上を制するうえで戦略的に重要となる水路)と呼ばれる非常に重要なルート。米国エネルギー情報局(EIA)によると、世界の約2割に相当する原油および石油製品がホルムズ海峡経由でタンカーで運ばれる。仮にホルムズ海峡が封鎖されると、エネルギー資源の供給が大幅に滞ることから、ホルムズ海峡はエネルギー資源輸送においての「生命線」と言える。

出所:EIA

日本の産業への影響は?

当然、日本もホルムズ海峡問題からの影響は免れない。直接的に影響を受ける産業や企業としては、原油や液化天然ガス(LNG)の輸入を中東に多く依存する電力やガス会社のほか、燃料価格の上昇や海上保険料(船体および貨物保険料)の上昇により海運会社への影響が懸念される。さらに、原油やLNG価格の高騰に起因するコストプッシュインフレが起こると、日本の製造業や小売業等、幅広い産業に打撃を与えそうだ。

長期化すればユーロ安も

イランへの経済制裁や中東情勢の混乱による、欧州経済への波及的影響も警戒する必要がある。BIS(国際決済銀行)のデータによると、欧州の銀行は中東への与信エクスポージャーが比較的多い。仮に中東情勢を巡る混乱の長期化に伴い中東の債務リスクが高まると、欧州の銀行への影響に起因する欧州景気悪化の警戒感や欧州危機の再燃懸念などから、円高ユーロ安が進む可能性があろう。

各業界への影響は

業界・企業への波及効果の詳細は、経済予測SaaS『xenoBrain(ゼノブレイン)』上で確認されたい。

上図は、xenoBrainの分析結果の一部です。

始動が近づく5G、その影響は

5G元年

5G(第5世代移動通信システム)への注目が世界的に高まっている。
5Gは、現在実用化が進められている次世代の通信システム。通信システムの世代交代はおおむね10年サイクルで起きているが、今年はちょうど次世代の通信システムに世代交代される節目にあたる。いわゆる「5G元年」だ。

5Gの最大の特徴は、通信速度の大幅な向上にある。現在使われている第4世代(4G)の通信速度は100Mbps~5Gbps程度だが、5Gでは最大20Gbps程度まで速度が向上する。分かりやすい例を挙げると、5Gが導入されることで、インターネットで動画が止まったり、音声が途切れたりすることがなくなり、より快適なインターネット環境が実現される。

出所:総務省「 2020年の5G実現に向けた取組 」

5Gサービスは、米国や英国、韓国では既に開始されている。日本でも、NTTドコモが2020年の商用化に向けて2019年9月20日に5Gプレサービスを開始すると発表、KDDIも同年9月中にプレサービスを開始するなど、今秋から5Gサービス開始に向けた取り組みが本格化する予定だ。

5Gであらゆるもののスマート化が加速

5Gでは、大幅な通信速度の向上が可能となるため、情報社会の進展に伴う爆発的な通信量の増大に対応できる。NTTドコモによると、2020年代の情報社会では、移動通信のトラフィック量は2010年と比較して1000倍以上に増大すると予測されている。5Gは、このような爆発的なトラフィックの増大に耐えうるネットワークシステムの大容量化を、極力低コスト・省消費電力で実現できる可能性がある。

爆発的な通信量の増大に対応できる5Gは、これまで普及が限定されていた次世代型製品やサービスの普及が拡大する契機にもなる。自動運転やスマート工場、スマートコンストラクションなど、あらゆるもののスマート化、さらにそれらに伴う働き方改革など、社会や経済の大きな変革が期待される。

2兆円規模の5G投資、波及効果は甚大

5Gの導入には莫大な投資が必要になる。総務省によると、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社を合わせ、5Gへの総投資額は5年間で2兆円弱にのぼる。この規模になると、産業全体に甚大な波及効果をもたらしそうだ。

<通信会社各社の 2019年度~2024年度までの累計投資額>

NTTドコモ KDDIソフトバンク楽天モバイル
基地局投資6,600億円3,728億円 1,221億円 1,598億円
交換設備・伝送路投資 1,350億円  939億円  840億円  348億円
合計7,950億円4,667億円 2,061億円 1,946億円

【産業や企業への影響】
(1) 基地局・通信工事関連

通信会社各社による大規模な投資を背景に、基地局や光伝送装置、光関連製品を手掛ける企業や、通信工事会社などが恩恵を享受しよう。

(2) 次世代スマートフォン関連
また、スマートフォンをはじめとした携帯端末も、5G対応機種への買い替えが進むとみられる。それにより、積層セラミックコンデンサやSAWフィルタ、水晶デバイス、CMOSセンサーなどの電子デバイスメーカーや、リチウムイオン電池などを手掛ける電池メーカーの業績をけん引しそうだ。

(3) 動画サービス・広告関連
通信速度の向上により、個人や法人の動画関連サービスの利用も増えると想定される。そのため、動画広告デジタルサイネージなどを手掛ける産業や企業にも注目したい。

(4) スマート化・働き方改革関連
さらには、上述したように、自動運転やスマート工場、スマートコンストラクションなど、あらゆるもののスマート化、働き方改革に関連する、自動搬送システムやロボット、ドローン、および働き方改革ソリューションなどの市場も拡大しそうだ。

産業・企業への波及効果の詳細は、経済予測SaaS『xenoBrain(ゼノブレイン)』上で確認されたい。

上図は、xenoBrainの分析結果の一部です

進む脱プラスチック、G20合意の影響を探る

レジ袋やストロー等のプラスチックごみによる海洋汚染の問題が契機となって、世界中で脱プラスチックの議論が進んでいる。2016年世界経済フォーラム年次総会の報告書によれば、毎年800万トンもの廃プラスチックが海に流出しており、恐ろしいことに2050年までに海洋中のプラスチックの量が魚の量を凌駕すると言われている。

海洋汚染を招くプラスチックごみが世界的な問題となる中、6月に開催されたG20サミットで2050年までにゼロにする目標を導入することで各国が合意した。まず初めに、世界の脱プラスチックへの動向を見ていこう。

世界の脱プラスチックへの流れ

世界各地での、脱プラスチックに向けた取り組みの現状を以下にまとめた。

地域取り組み
EU2030年までにEU域内で使用されるすべてのプラスチック容器包装をリユースまたはリサイクルすると同時に、使い捨てプラスチック製品を段階的にゼロにすることを目指す。域内では、年間約2,500万トンのプラスチックごみが消費され、リサイクルされるのは30%以下にとどまっている。
英国「今後25年間の環境計画」を発表。柱の一つとして、海を汚染しているプラスチックごみを2042年までに可能な限り削減することを掲げています。具体策として、イングランドでレジ袋の有料化、さらに4月には、プラスチックごみの削減を加速するため、使い捨てのプラスチック製ストローやマドラーなどの販売を禁止すると発表。早ければ2019年に実施される見通し。
台湾2030年までに、飲食店でのプラスチック食器類の提供を全面的に禁止すると発表。プラスチック製のストロー、テイクアウト用カップ、使い捨て食器などの提供を2020年、2025年、2030年の3段階で規制していく計画。
米国2018年6月、カリフォルニア州は、飲食店でプラスチック製ストローの提供を全面的に禁止にした。マサチューセッツ州の一部地域では、ペットボトル飲料水の販売禁止する条例が施行されている。

国家、地域単位だけではなく、企業ごとにも、脱プラスチックに向けた取り組みは加速しつつある。

マクドナルドは、英国とアイルランドの全店舗で、プラスチック製のストローから紙製のストローに順次切り替える。スターバックスは、2020年までに世界全店舗でプラスチックストローを段階的に廃止する計画。コカ・コーラはペットボトル素材として、リサイクル素材あるいは植物由来PETの採用を推進し、2030年までにペットボトルの50%をリサイクル可能素材にすることに挑戦する。

日本での取り組み

こうした国際的な潮流の中で、日本でも、脱プラスチックに向けた取り組みが本格化しつつある。

2019年3月には、環境省が「プラスチック資源循環戦略案」を取りまとめた。本重点戦略では、レジ袋有料化の義務付けや、国内で資源循環体制の構築、2030年までにバイオプラスチックを約200万トン導入、再生利用を倍増などを掲げた。

企業ごとの取り組みに目を向けると、ファーストリテイリングは2020年をめどにグループ全体で、ショッピングバッグと商品パッケージの85%に当たる約7800万トンの削減を目指す。セブンイレブンはすべてのおにぎり包装を、バイオマスプラスチックに切り替える方針を明らかにするなど、大手企業を中心に明確な目標が打ち出されつつある。

脱プラスチックによる経済波及効果

世界の脱プラスチックへの流れは、各業界・企業へどのような影響が生じるのか、経済予測SaaS『xenoBrain(ゼノブレイン)』の分析結果の一部を見てみよう。

上図は、xenoBrainの分析結果の一部です。

【注目】生分解性プラスチックとは?

政府がまとめた資源循環戦略案では、プラスチック製のレジ袋やトレーの抑制を目指すとともに、資源再利用やバイオプラスチックの普及を促す。化石燃料由来のプラスチックは分解されにくく、微細化した「マイクロプラスチック」が海洋中の生態系に悪影響を及ぼす懸念が指摘されている。各企業が包装や繊維、機器などの素材を化石燃料由来のプラスチックからバイオプラスチックへの切り替えを進めている。

バイオプラスチックの一つ、「生分解性プラスチック」とは通常のプラスチックと同様の耐久性を持ち、使用後は自然界に存在する微生物の働きで最終的にCO₂と水にまで完全に分解されるプラスチックと一般的に定義されている。生分解性プラスチックは分解性に係る機能に着目している。

この生分解性プラスチックはEUで徐々に市場投入され、国内でも導入が始まりつつある。

生分解性プラスチックの世界生産量は88万トン、全世界のプラスチックに占める割合は1%未満で存在感は小さい。22年には108万トンの生産が予測されているが、各国政府による後押しでプラスチック製品に対する環境規制や外食チェーンによる自粛の動きが拡大し、予測を上回るスピードでさらなる需要が期待される。

出所:Green Japan

生分解性プラスチック関連企業

xenoBrainによって示された生分解性プラスチック関連企業の現状を以下にまとめた。

企業名取り組み
カネカ (4118)2019年1月に欧州委員会で包装材料として、「カネカ生分解ポリマーPHBH」が認定された。2019年秋にも欧州全域での使用が可能になる見通し。
三菱ケミカルHD (4188)生分解プラスチックのバイオPBSを開発。使い捨て食器や紙コップ、ストロー、ガスバリア包材などの食品包装材用途でも使用可能。
ユニチカ (3101)生分解性プラスチックの「テラマック」を開発。ストローや不織布、電子機器などに幅広く展開。
クラレ (3405)バイオマス原料由来のガスバリア材。食品包装として使用。食品メーカーからの採用が進んでいる。
東レ (3402)バイオマス由来ポリマー素材。生活・土木・農業資材分野に展開。
凸版印刷 (7411)二酸化炭素排出量を40%削減する包装材フィルムを開発。

G20での国際合意により今後ますます廃プラ規制、脱プラスチックの流れは加速することが予想される。生分解性プラスチックか、また別の新たな素材が注目を集めるか、国際的に不可避な脱プラの流れの中で、各企業の取り組みには注視が必要だ。

カジノ関連法案の今後と企業への影響

2016年12月、統合型リゾート整備推進法案、通称「カジノ法案」が参院を通過し、成立した。

インバウンド需要の喚起や周辺事業者への経済効果、ギャンブル依存症対策など、幅広い観点から注目を集めるカジノ法案について、本記事では、今後の動向と予想される各企業への影響を考察する。

カジノ関連法案とは

カジノ法案は、正式名称を 「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」 とし、2016年12月に制定されたた。

法案の冒頭、第1条は、以下のように始まる。

(目的)第一条 この法律は、特定複合観光施設区域の整備の推進が、観光及び地域経済の振興に寄与するとともに、財政の改善に資するものであることに鑑み、特定複合観光施設区域の整備の推進に関する基本理念及び基本方針その他の基本となる事項を定めるとともに、特定複合観光施設区域整備推進本部を設置することにより、これを総合的かつ集中的に行うことを目的とする。

この記載からも明らかなように、カジノ法案は「統合リゾート(IR)の整備を通じた観光振興、及び財政改善」を目的とした法案で、 カジノを含む統合リゾートはその手段の一つとして位置づけられている。

では、統合リゾート(IR)とは、どのような施設をさすのか。

統合リゾート(IR)は、リゾートホテル、温浴施設、映画館、劇場、アミューズメント施設、レストラン、展示会場等が集まった、いわゆる複合型観光施設をさすとされる。

海外では、シンガポールのベイエリア、マカオ、ラスベガス等が有名で、特にシンガポールは統合リゾート(IR)が観光産業に大きく寄与した例として、日本の「特定複合観光施設区域整備推進本部事務局」の検討資料の中でも、日本が参考にする事例として取り上げられている。

(参考) 特定複合観光施設区域整備推進本部事務局   IR推進会議取りまとめ(概要) 〜「観光先進国」の実現に向けて〜

カジノが開業するまで

カジノ法案の成立から既に2年半が経過したが、実際に日本でカジノが開業するまでの流れはどのようになるのか。以下にまとめた。

現在は、カジノ管理委員会の設置までが完了し、政府による統合IR基本方針の発表を待つ段階だ。

その後、実際のカジノ開業に向けては、候補地及び事業者選定、IRリゾートの開発を経る形となるため、カジノ開業時期については、現時点では流動的ではあるものの2025年頃を見込む声が多いといわれている。

現在の主要候補地

2019年7月時点で誘致を表明している候補地は下図の通り。

先述の通り、候補地の選定はIR基本方針の制定後となるため、具体的な時期については明言されていないものの、 各地の誘致合戦は盛り上がりを見せる。

一例としては、神奈川は横浜・山下ふ頭の立地を想定し、横浜の歴史とも調和したIRをアピール、長崎は佐世保市のハウステンボスへの誘致を表明し、世界初となる海中カジノ施設案の発表が話題を呼んだ。

一方で、誘致を行う都市でもカジノによる治安の悪化やギャンブル依存症患者増加への懸念は依然根強く、横浜で地元団体によりカジノ誘致断念を自治体に対して求める請求が行われるなど、誘致自治体は経済政策と住民感情の狭間で難しい判断を迫られているのが現状だ。

カジノ開業による各企業への影響

統合リゾート(IR)による経済効果は2兆円を超すとの試算もあり、 IR推進法、IR実施法が整備され、候補地選定も大詰めを迎えた今、 各業界への影響には、大きな注目が集まる。

各候補地の中でも、2025年に万博開催が決定した大阪は有力な候補地と目されており、仮に統合リゾート(IR)の候補地として大阪・夢洲(ゆめしま)が選定された場合に、各業界・企業へどのような影響が生じるのか、経済予測SaaS『xenoBrain(ゼノブレイン)』の分析結果の一部を見てみよう。

上図は、xenoBrainの分析結果の一部です。

大阪・夢洲が統合リゾート(IR)の候補地として選定された場合には、周辺地域に物流用地を所有する山九(9065)や上組(9364)等の企業に用地特需によるポジティブな影響が出る可能性が示唆されている。また、周辺での道路工事需要が高まることから、関西地盤で夢洲地区で既に工事受注実績もある五洋建設(1893)にも影響が出るだろう。

また、事業者選定リスクはあるものの、IRリゾートを手掛けるセガサミーホールディングス(6460)にも、大きなビジネスチャンスとなる。セガサミーはパチンコ・スロット関連機器でも実績を有し、リゾートホテルだけでなく、カジノ内で使われるスロットマシン等の機器需要も追い風となることが示唆さされている。

その他にも、実際のxenoBrainでは、警備サービス関連のセコム(9735)、綜合警備保障(2331)や、両替機、現金処理機を扱うグローリー(6457)、高見沢サイバネティックス(6424)、日本金銭機械(6418)、アミューズメント機器向けの電源装置の製造・販売を手掛けるオリジン(6513)に対する影響も示された。

これはあくまで大阪。夢洲が候補地として選定された場合に想定される影響であり、候補地によっては全く異なる事業者への影響が予想される。夢洲以外の候補地が選定された影響についてはxenoBrainの分析結果を参照されたい。

インバウンド需要喚起、地域経済活性化の目玉として大きな注目を集める統合リゾート、まずは直近に迫る候補地選定と事業者選定のタイミングまで、引き続き目が離せない。