2020年にForecast Techは普及する―予測の活用事例と課題感を、注目企業が語る(後編)

2019年12月5日、テクノロジーを用いて予測分析を行う「Forecast Tech」(フォーキャストテック)の最前線を担う企業が登壇した初めてのカンファレンス「Forecast Tech Conference 2019」が開催されました。

本記事では、イベント後半の模様をご紹介します。(前編の記事はこちら

パネルディスカッション「注目スタートアップ3社が語る、最前線のForecast Techと導入現場のリアルとは」

パネルディスカッションでは、ファッションなど人の感性を解析し販売予測などを行う株式会社SENSYの渡辺氏、為替や金利などの価格を予測し金融機関を中心に導入されるAlpacaJapan株式会社の北山氏、排泄タイミングを予測し介護などのシーンで活用されるトリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社の中西氏と、それぞれ違う分野で予測サービスを展開するスタートアップ3社にお集まりいただき、各社が予測を実現している強みや課題について語っていただきました。

モデレーターは投資信託のデジタルトランスフォーメーションを進めるロボット投信株式会社の野口氏に、会場からの質問を随時受け付けながら進行していただきました。

各社の技術的な強みとは?

野口:最初のテーマは、「各社の予測技術は何が画期的なのか」。技術的な観点から、それぞれお答えいただけますか?

渡辺:弊社が取り組んでいるのは、「お客様一人ひとりの行動予測を積み上げる」という予測方法です。

渡辺: 明日売れる商品を予測するのに、「どういうタイミングで来店し、どういう商品を買いたいか」というお客様の行動分析を経て、商品の販売予測を行います。単純に膨大な計算量が必要になるので、行動分析を効率的に積み上げる工夫をしておりまして、その点が技術的優位性になるかと思います。 もう一つは、購買データの蓄積量です。お客様一人ひとりの分析をやろうとしても、小売企業の方々はデータを蓄積していないことが多い。弊社は、全国の商品の1%に相当するパブリックな購買データを集めておりますので、お力になれることも多いと思います。

野口:会場から質問が来ています。渡辺さんがAIで予測分析に取り組もうとしたきっかけは何でしょうか?

野口 哲氏
ロボット投信株式会社 代表取締役社長

「金融を変える。ロボットが変える。」をミッションに投資信託のデジタルトランスフォーメーションを進めるロボット投信を2016年に創業。2007年にSBIホールディングスへ入社し、決済・暗号・Webマーケティングを担当。2011年からピクテ投信投資顧問にて、公募株式投信のデータ解析・マーケット分析業務に従事。紙を前提にした複雑な投資信託バリューチェーンの変革に挑む。

※野口氏のインタビュー記事はこちら

渡辺:2008年くらいにコンサルタントとしてアパレル企業を訪問した際、倉庫に膨大な在庫の山があったのですが、その半分くらいが廃棄処分されるということを目の当たりにしたのが直接のきっかけですね。大学時代はAIを研究していたので、こういう業界の課題をAIで解決できないか、お客様と商品のミスマッチを解決できないかと考えました。

野口:続いてAlpacaの北山さん。先月、新商品のAlpaca Forecast Cloudをリリースされましたね。おめでとうございます。

北山:ありがとうございます!さて、弊社の強みですが、あえていうなら「サイエンスの強さ」となるでしょうか。Alpacaは基本的にサイエンスの会社でして、誰もが匙を投げるような難しい課題にあえて取り組む、そういうチャレンジを事業にしています。

たとえばAlpaca Forecast Cloudの場合、私達が注目したのが、ティック、ミリ秒単位で発生する為替の細かい値動きです。為替は人間の需給や思惑など、あらゆる情報が集まってパターンが形成されている。人間にはもう予測できない領域ですが、私達は深層学習のエンジンを用いて予測モデルを作り、この分野にアプローチしています。

野口:最後にトリプル・ダブリュー・ジャパンの中西さん。ヘルスケア分野での予測分析を手掛けていらっしゃいます。

中西:排泄予測デバイスの「DFree」を販売しております。排泄はここにいらっしゃる皆さん全員に関係する問題ですね。画期的な点を一言でいえば、超音波技術をウェアラブルデバイスに落とし込んだ、という点になります。

野口:蓄積したデータを解析している点と、超音波技術の2つを合わせて使っている点、他社さんが真似できない強みですね。

予測分析サービスの課題感

野口:続いて、「将来予測の現場にいるからこそわかる、予測サービス導入の課題」。まずSENSYさんですが、会場から「分析はオンライン限定なのか、それともリアルな店舗も分析できるのか」と質問が来ています。

渡辺:両方やっていますが、販売のボリュームはやはりリアルなチャネルが8割、9割ということが世の中の小売の現状かなと思っていますので、メインはリアルです。オンラインのデータは補完的に使っています。

野口:ありがとうございます。ちなみに、非定型データは扱われているのでしょうか?

渡辺:扱えます。アパレル業界では、AI的に言えば商品の特徴量は、シーズンごとに変わります。今年投入するこの商品が、過去のどの商品と売れ行きパターンが近くなるかを予測するには、画像や文章などの非定型データの分析にも取り組まざるを得ません。

渡辺 祐樹氏
株式会社SENSY  代表取締役CEO
慶應義塾大学理工学部システム工学専攻、人工知能アルゴリズム研究に従事。株式会社フォーバルを経て、IBMビジネスコンサルティングサービスにて戦略コンサルタントとして製造業・サービス業の事業戦略策定、組織再編、業務変革などに従事しながら、公認会計士資格を1年で取得。2011年カラフル・ボード株式会社(現SENSY)を創業。

野口:アパレル以外の小売業でも展開可能なんでしょうか?

渡辺:はい。今年の夏からスーパーやドラッグストアで需要予測のプロジェクトが始まっています。アパレルと同じように、あるお客さんのスーパーへの来店タイミングなどの行動予測を積み上げていくと、明日用意しておくべき豆腐の数などが予想できる。これまでどんぶり勘定で行っていたプロセスが変わります。

野口:続いてAlpacaさんにお伺いしたいのですが、これまで金融機関に導入する際に課題はありましたか?

北山:収益貢献についての、お客様との認識の擦り合わせですね。 たとえば製造業の需給予測の場合は、人間でもある程度予想できる領域をAIでサポートして精度向上を図る、というイメージになるかと思います。しかし、マーケット予測の場合、当たるも八卦当たらぬも八卦の世界で、50%の予測精度を少し上げて60%にする、という取り組みになる。なので、導入した時に「60%の精度にして、どれくらい利益が出るのか?」という点をお客様にご理解いただかなければなりません。

北山 朝也氏
AlpacaJapan株式会社 CPO/Head of R&D

10年間ソニーに在籍し、PlayStationのサポートチームのマネージャーとしてゲームタイトル開発者とPlayStation開発チームの橋渡しを行う。2015年よりAlpacaに参画し、金融機関との様々なプロジェクトを企画・実施、金融 X AIでビジネスをつくることに日々もがく。現在はChief Product OfficerとしてAlpacaのプロダクトを統括。慶應義塾大学・慶應義塾大学大学院卒、2008年度IPA未踏スーパークリエイター。

※北山氏のインタビュー記事はこちら

野口:続いてトリプルダブリューさん。排泄予測は、今どのような場所で活用が広がっているでしょうか?

中西 敦士氏
トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社 代表取締役

慶應義塾大学商学部卒。大手企業向けのヘルスケアを含む新規事業立ち上げのコンサルティング業務に従事。その後、青年海外協力隊でフィリピンに派遣。2013年よりUC Berkeleyに留学し、2014年に米国にてTriple Wを設立。2015年に当社設立。
著書:「10分後にうんこが出ます-排泄予知デバイス開発物語-」 2016年・新潮社

中西:BtoB領域で言うと、リハビリ病院や介護施設といった施設での導入が中心ですね。ですね。排泄は人間に絶対必要なイベントですが、これを予測できると、ライフスタイルにも大きな影響が出ると思います。

野口:会場から、「大きい方」は予測できますかという質問が来ています。

中西:はい。目下開発中です。

Forecast Techスタートアップの将来構想

野口:それでは最後の質問に移ります。「各社の将来ビジョン」ということで、SENSYさんから順番にお願いします。

渡辺:元々、企業の活動と生活者のミスマッチを解決したい、と言う思いでSENSYを創業しました。企業が良かれと思って開発した新商品を、お客様が購入したことを後悔したりとか。これをデータという観点から解決していきたい。 SENSYでは現在、多くのPOSデータをお預かりしています。各企業様の消費者の皆さまをペルソナ化して、データベース化、それを企業内のAIにフィードバックしていく。こうした仕組みが出来始めている段階なので、データ量をさらに増やし、活用の場を広げたいです。

中西:我々の強みは生体センシングと、そこからデータを取ってくる技術です。例えばお腹が減るとか、我々が日常で自分の体から受け取る感覚は非常に多くあります。そこで「どのくらい食べればいいか」といった答えをしっかり数値化するサービスを作りたい。そういったサービスを家庭の中に広げていくことで、家庭のヘルスケアサービスを総合的に底上げしていくことを目指していきたいと考えています。

北山:弊社の場合、パートナーの方と寄り添ってビジョンを達成する会社。なにか難しいことにチャレンジしたいという時に一番力になれる会社になれるように技術を磨いているというところですね。

野口:ちなみに皆さん、プライバシーの観点からデータ収集の際に気をつけている点はありますか?

渡辺:個人情報は外した形でデータを扱っていますが、それでもセンシティブな情報ですので、ISMSを取得するなど、データ管理には細心の注意を払っています。

北山:プライバシーデータは扱っていないのですが、ひとつ気を付けていることがあります。金融データは全てのデータに値段がついておりまして、そうすると、インプットのデータにかかるコストがアウトプットのデータの収益を超過することがあります。

野口:それは分かりますね…。この点、金融の方も共感いただけるんじゃないでしょうか。

北山:なので費用対効果には気をつけていますね。

中西:弊社はプライバシーのデータを使っていますが、逆にそれを気にしすぎると、今度は利便性が落ちてしまいます。そこは、実際ご導入いただく施設に合わせて、完全匿名にするのか、あるいは実名で使うかを選択するようにしています。

野口:最後に総括ということで。3社とも違う領域ですが、データのインプットをもとにして社会にインパクトを与えるビジネスを展開されています。参加者の皆さまは、是非、学びを自社に持ち帰って、「自社ならこんな事ができるんじゃないか」と提案していただければと思います。本日は、ありがとうございました。 〇パネル登壇各社の主要サービス
SENSYMD:お客様一人ひとりの嗜好性や購買タイミングなどを感性としてパーソナル人工知能に学習させ、商品需要予測の精緻化を通じて、追加発注やマークダウンを最適化。

Alpaca Forecast Cloud:機械学習によりリアルタイムティックデータから値動きの短期予測シグナルを生成。

DFree:超音波技術により膀胱内の尿のたまり具合をリアルタイムで計測する、世界初のウェアラブルデバイス。

ファンド・アナリティクス:販売会社の販売員向けに基準価額変動要因分析を提供するASPサービス。日次信託報酬額、日次資金流出入額も併せて提供


まとめ

Forecast Tech研究所による、第一回目のForecast Tech Conference は、様々な分野におけるForecast Techサービスを広く取り上げ、業界の高い可能性を示唆するものとなりました。懇親会の場では、登壇各社がブースを設置して実際のサービスを直接紹介し、意見交換の場としても盛り上がりを見せました。今後も最新の予測サービスや技術を広める場としてForecast Tech Conferenceを定期開催していきたいと思います。

2020年にForecast Techは普及する―予測の活用事例と課題感を、注目企業が語る(前編)

2019年12月5日、テクノロジーを用いて予測分析を行う「Forecast Tech」(フォーキャストテック)の最前線を担う企業を集めた初めてのカンファレンス「Forecast Tech Conference 2019」が開催されました。

本イベントは、経済の未来を予測するAIを開発するスタートアップ企業、株式会社xenodata lab.(ゼノデータ・ラボ)が、同社の立ち上げた「Forecast Tech研究所」の最初の取り組みとして、Forecast Techの認知度を高め、業界を盛り上げていくことを目的に開催しました。

本記事では、イベントの模様を前後編の2回に分けてお届けします。

■オープニングスピーチ「Forecast Techとは何か?経営意思決定の在り方を根底から変える予測技術の最新動向と、ゼノデータ・ラボの最新予測サービス発表」

カンファレンスを主催したゼノデータ・ラボ代表の関のオープニングスピーチでは、Forecast Techが日本における2020年の企業デジタル化の最重要トレンドになるとし、現在予測サービスが中々普及しない事には2つの壁があると語りました。また、当日新発表となった、当社の経済予測AIサービス「xenoBrain(ゼノブレイン)」の大幅刷新の内容と2020年の戦略について説明しました。

関 洋二郎
株式会社 xenodata lab. 
代表取締役社長 / 公認会計士

あらた監査法人(現PwCあらた監査法人)にて、上場/未上場企業の財務諸表監査、内部統制監査に加え、システム監査、データ監査業務などのIT統制に従事。その後株式会社ユーザベースにて、ビジネスプラットフォーム「SPEEDA」の事業開発部責任者として、国内外の市場環境調査から、プロダクト戦略の立案、仕様設計、本番運用など一連のプロセス執行を担当。2016年に株式会社xenodata lab.を設立し、自然言語処理技術をもとに、企業業績や経済の動向などの将来を予測するSaaS型AIサービス「xenoBrain」(ゼノブレイン)を提供する。

Forecast Techは2020年の最重要トレンドへ

関:なぜ今Forecast Techカンファレンスを開催するのか?それは、2020年、Forecast Techが日本企業のデジタル化の最重要トレンドの一つになるからです。本カンファレンスは、最先端のテクノロジーを持っているForecast Tech企業様最前線のリアルな現場の状況を皆様にお届けする、実用的な内容です。

ではForecast Techとは何なのか。これは「Forecast」と「Technology」を掛け合わせた言葉で、「Fintech」や「InsureTech」のようなクロステックの一つです。海外では「Predictive Analysis」と言われていますが、我々がより日本人に馴染みの深い言葉にしたものです。

予測の分野にはざっくり言うと金融、経営、公共の3つがあり、金融分野は株価や業績の予測など、経営分野は需要予測や消費者動向など、公共分野は犯罪の予測や排泄予測などです。特徴としては海外企業が多く、投資金額の規模は概算で100倍の開きがあります。

また、海外ではすでに社会に大きなインパクトを及ぼしています。

〇海外で先行するForecast Techの事例
  ・dataminr社:SNS解析で商品価格予測、ヘッジファンドに巨額の利益をもたらした実績
・C3:製品需給予測で、年間50%の在庫コスト削減
・PREDPOL社:犯罪予測で、ロサンゼルスの犯罪発生件数を最大で半減

日本企業が「意思決定の後進国」に陥る、予測サービスが普及しない2つの「壁」

一方で日本の状況はというと、まだ社会実装されているというフェーズには至っていないと考えています。その理由は2つあります。

〇予測サービスが普及しない2つの「壁」
サービス提供側の壁
 研究開発期間が長くなりがちで、不確実性が高い性質を持つ。そのため投資家が投資しにくい⇔サービス提供企業が少ないというスパイラルが発生
 
利用者側の意識の壁
 ・自分たちの勘と経験が一番だという過信
   ⇒AIが強い部分と、勘と経験が活かせる部分で総合的に活用すべき
  ・100%当たる事を求める
   ⇒本来は現状の業務での予測精度との対決のはずだが、AIには100%を求めがち

経済の未来を「予測」から「スコア化」へ。 xenoBrain(ゼノブレイン)の進化

 関:2020年、xenoBrainは将来の未来をスコア化するサービスに生まれ変わります。ダウ・ジョーンズや時事通信社から提供を受けている約5,000メディアのニュースデータに加え、米系リサーチファームと提携し、専門家のリサーチに基づき統計データをシステムに入れ込みます。また、先月帝国データバンクとの提携を発表しており、40万社の未上場企業データを解析対象に加えます。この3つのデータを用いて経済の未来をスコア化していきます。 さらに、企業情報の開示や調査結果がないような未上場企業の影響については、機械学習の推計値も用いることで補完していきます。

〇スコア化に利用するデータ
・5,000メディアのニュースデータ
・専門家のリサーチに基づく統計データ
・40万社の未上場企業信用調査報告書データ

〇予測(スコア化)対象
・企業業績:国内40万社超
・業界需要:国内主要業界
・素材価格:国内主要業界

関:今後、幅広く使えるサービスになっていきますが、まずは事業戦略、法人営業、投資/融資の3つの業務を変えていきます。企業の意思決定を支えるリサーチを、デジタル化します。
xenoBrainについて詳細はこちら

■ゲストスピーチ「Forecast Techが身近になる時代へ ~非専門家向け予測ソフトウェアPrediction Oneと導入事例の紹介~」

ゲストスピーカーとしてご登壇いただいた、ソニーネットワークコミュニケーションズの高松氏は、同社が現在無料公開する予測サービス「Prediction One」について、特徴や導入企業の活用方法について紹介し、実際に壇上で数値を読み込ませた予測を実行して簡単に操作できる様子を実演されました。

高松 慎吾氏
ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社
AI事業室 Prediction One プロジェクトリーダー

機械学習のエンジニア。Forecast Tech、大規模データ解析、自然言語処理などの分野が専門。ソニーグループを中心に、製造、金融、サービス、不動産を含む数多くの業界・業種で予測アルゴリズム開発とビジネスへの導入を手掛ける。非専門家でもForecast Techを使いやすくするソフトウェア「Prediction One」を開発し、その新規ビジネスのリーダを務める。

非専門家でも簡単に使える予測分析ソフトを開発

高松:Forecast Techは応用範囲が広く、また導入効果が出やすい点が特徴です。

例えば、見込み顧客を大量に抱えている営業の方であれば、一人ひとりの成約確率を予測できれば成約件数の増加が見込めます。コールセンターの管理者なら、入電件数を予測できれば、オペレーターの人員計画が立案しやすくなる。予測分析すると意思決定の精度が上がり、コストも抑えられます。同じことが、研究開発、企画、設計、マーケティング…全領域で実現可能です。

しかし、予測サービスの普及はまだ進んでいません。これは予測分析で使う機械学習の専門家不足が原因だと、我々は認識しています。内閣府の定義する先端AI人材の中でも、予測分析の専門家はわずか。ほとんどの企業は専門家無しで予測分析を行うことになってしまいます。

こうした課題を解決するため、非専門家でも使いやすいように設計した予測分析ソフトウェアが「Prediction One」です。今年6月にリリースし、現在はユーザー拡大のために無料で提供させていただいています。

想定ユーザーは、「予測分析技術を初めて使う」人。利用ハードルの低さ

高松:まずは予測分析技術を初めて使う方や、予測分析技術の導入に一度挫折した方。次に、日々の業務で経験や勘による予測を立てている方。たとえば、営業の需要予測ですね。Prediction One を使えば、業務プロセスはそのまま、予測精度を高められる可能性があります。最後に、予測分析を導入したけれど、期待通りの成果が出ない方。Prediction Oneなら、高精度の予測を出せます。

高松:Prediction One の特徴ですが、ひとつ目はシンプルで簡単に使えるところです。他社の予測分析ツールと比較すると、クリック数や学習処理時間が短く済み、予測精度も高精度。バランスの良いツールに仕上がっています。

2つ目はワンクリックで予測モデルを自動生成できること。データの前処理から予測モデルの生成を自力で行うのは大変です。Prediction Oneならこのプロセスを、データに合わせて自動処理できます。

3つ目は予測の理由が分かること。ビジネス現場では「予測精度が90%です!」と言うだけでは誰も使ってくれません。「この予測は、データのここを参照して出している」と説明すれば、周囲に納得してもらえます。 4つ目は標準的なPCでも動作することです。Prediction Oneはクラウドではなく、ノートPCやデスクトップPCで動作するソフトウェアです。予測サービスの場合、顧客データをクラウドに上げられないこともあるので、こうした仕様にしています。

最後に、ソニーグループ内での導入事例をご紹介します。不動産営業を行うSREホールディングスは、有望顧客リストを作る目的でPrediction Oneを導入しました。従来は営業推進担当者が 数時間以上かけてリストを作っていましたが、導入後は数分で作成出来るようになりました。文系の方が使っているのですが、それでも問題なく回っている点がポイントです。この他、ソニー損保でのコールセンターの入電件数予測や、半導体製造現場での半導体特性を予測し製造効率を高める目的でPrediction Oneを導入しました。

Prediction Oneについて詳細はこちら

■ゲストスピーチ「Amazon Forecast : Amazon.com と同様のテクノロジーに基づき将来のビジネス状況を予測」

2人目のゲストスピーカーとして登壇いただいた、アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社の針原氏は、Amazon.comが自社ECサイトで顧客への価値提供を最適化するために開発・利用していた予測テクノロジーを用いてAmazon Web Services (AWS)がサービス化した「Amazon Forecast」について、仕組みやユースケースを紹介されました。

針原 佳貴氏
アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社

Startup Solutions Architect

2018年 東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了。
量子光学を応用した計算機による組合せ最適化問題の近似アルゴリズム研究で研究科長賞受賞。
在学中にスタートアップのアイディアを模索し、2017年度東京大学アントレプレナー道場アントレプレナーシップ・チャレンジ最優秀賞。
2018年4月アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社入社。
現在はソリューションアーキテクトとして、スタートアップにおける機械学習基盤設計などの技術支援に従事。

Amazon.comの深層学習技術を誰でも利用できるサービス

針原:今日皆さんにご紹介するのは、高精度予測を行うための機械学習サービス、「Amazon Forecast」です。

Amazon.comは世界185カ国で年間10億ものパッケージをお届けするECサイトを展開しています。この中で、時系列予測は非常に大事なタスクとなります。それは、Amazon.comが抱える巨大な品揃えを、お客様にできるだけ低価格で、いち早くお届けするためです。そのためには、商品需要を正確に予想しなければなりません。元々、Amazon.comでは統計手法を用いて、洗剤や日用品、クッキー、日焼け止めなどの季節商品の需要予測を行っていました。これらは需要に周期性があるので比較的予想しやすいのですが、高い価格変動性のある商品や、特定の国でのみよく売れる商品、新商品などは予測が難しい状況でした。

そこで2015年から、深層学習の技術を取り入れました。これにより、4億点の需要予測が可能になり、在庫数とフルフィルメントコストを削減、無料の当日配達サービスを実現しました。

こうしたAmazon.comの培ってきた予測テクノロジーを、皆様にも簡単にお使いいただけるようにしたサービスが、Amazon Forecastです。深層学習の経験は不要で、お客様にカスタマイズされた学習モデルをセキュアな環境で提供します。 たとえば、売上を予測したい場合には、過去の売上データなど時系列データをインポートすれば、Amazon Forecastが将来の需要予測を行います。販売都市やチャネルをメタデータとして含めることも可能です。また、ターゲットの時系列ではないけれど関連するデータ、たとえば商品の価格変動や、プロモーション情報なども入れられます。

具体的なユースケースを紹介します。まずはCJ Logisticsさん。アジアの290地点で営業されており、小包の処理をしている企業です。各拠点の倉庫への人員配置や、輸送時間の予想のためAmazon Forecastをご導入いただきました。過去312日間での出荷量を履歴データとして入力し、またAmazon Forecastが予め用意した休日データセットを用いることで、より正確な予想が可能となりました。独自システムを構築することなく機械学習ベースの予測手法が使用でき、運用効率を向上できたと仰っていただけました。

次に紹介するのは日本のスタートアップ、Aidemyさんです。ブラウザでPythonなどのコードを書いて学べる、オンラインのプログラミング学習サービスを提供されています。ユーザーが演習で書いたコードを受け付けるのですが、サーバーコスト最適化のために必要なサーバー量を正確に予測したいという目的でご導入いただきました

予測分析以外にも、Amazon.comではいろいろな分野の機械学習のインフラなどいろいろなサービスを提供しています。ご興味ある方は、是非、PoCをご検討ください。

Amazon Forecastについて詳細はこちら

■登壇3社によるスペシャルセッション

スペシャルセッションでは、ゲストスピーカーのお二人に、業種に応じた将来予測の使い方に関する質問にお答えいただきました。

どんな商品でも将来の需要予測が分析可能

関:お二方とも、ありがとうございました。お話を聞いて思ったのは、両社とも爆発的な普及を予感させるサービスを展開されているなと。来年の今頃は、知らない人はいないくらい使われているんじゃないか、と思いました。

さて、今回のイベント参加者ですが、属性分布で見るとメーカーが22%と最大の割合を占めています。とはいえ、メーカーと言っても扱う商品は、自動車のように大きなものから、アイスクリームなど小型のものまで様々です。予測分析を行う上で、商品に向き不向きはありますか?

針原:過去の売上に関する時系列データがあれば、どんな商品でも使えます。Amazon Forecastなら、複数時系列分析が可能ですから小ロットで多品種の商品も分析可能です。商品ごとに正確な生産量を予測できますし、予測間隔も、1日、1時間ごとなど、用意したデータによって適切な時間で分析できます。

高松:製造にとって需要予測は重要です。けれども、経験と勘で在庫予測を行う方が多く、機械学習の導入はこれからです。Prediction Oneを使えば移行もスムーズですし、出てきた予測データに自身の経験と勘をプラスして、新しいPDCAを回せるようになります。

関:銀行・証券・保険の参加者も多くいらっしゃいますが、こういう分野ではどうでしょう?

針原:銀行窓口の人員計画や、企業のキャッシュフローなど財務予測に時系列予測が使えると思います。それと、結構わかりやすい例としては、ATMの現金。お客様がお金を引き出したい時にATMに現金がないと困るので、それぞれの場所で必要な金額を予測する必要があります。

高松:ユースケースは沢山あります。コールセンターの入電数予測やコールマーケティングとか。ただ課題としては、データ分析する部署しか分析に関わっておらず、現場で使われていないことも多い。Prediction OneもAmazon Forecastも、現場運用できるとすごく普及するんじゃないかなと思いますね。

後編では、新進気鋭のスタートアップの方々に、各社の技術的な強みや将来のビジョンについてお話しいただいた、パネルディスカッションの様子をお届けします。

Forecast Tech 小規模セミナーを開催します。【第一回:1/21(火)@渋谷】

12月5日開催したForecast Tech Conference 2019は大盛況のうちに終了いたしました。皆様のご反響も酌み、2020年1月より毎月小規模セミナーを実施させていただく運びとなりました。
その記念すべき第1回を1月に実施いたします!
都合がつかずFTC2019にご参加できなかった・将来予測に少しでも興味がある・リサーチ業務に携わっているビジネスパーソンの方はぜひお越しください!
1時間という短い時間ではございますが、海外の事例も含めた将来予測市場について盛り沢山な内容をお伝えさせていただきます!

• テーマ
デジタル化の最重要トレンドになるForecast Techとは

• 実施概要
日時:2020年1月21日(火)19:00~20:00
場所:株式会社xenodata lab.会議室
定員:6名
費用:無料
申込方法:pr@xenodata-lab.comまで、ご参加希望の旨ご連絡ください。

• アジェンダ
1. Forecast Techとは何か
2. 海外で盛り上がりを見せているForecast Techの事例紹介
3. 日本におけるForecast Tech2つの障壁と事例紹介
4. ディスカッション~将来予測技術のユースケースについて~

• 対象者
経営企画部門、調達部門、営業企画部門、DX推進担当者等

• プレゼンター
株式会社xenodata lab. アカウントエグゼクティブ 朴眞

• 趣旨
2020年、日本ビジネス界のデジタル化における最重要トレンドになることが予想されている「Forecast Tech(将来予測)」。その情報を発信しているForecast Tech 研究所主催が勉強会を実施いたします。海外ではすでに盛り上がりを見せている最新の予測技術の紹介や、日本における浸透状況と各企業が 乗り越えるべき障壁、国内で活躍している企業の紹介など、盛沢山な内容をお届けします。 現状のリサーチ業務やツールに満足できていない方など、是非ご参加ください!

SNS解析から瞬時にリスクを検知するDatamir

Forecast Tech 研究所では、様々な予測に基づく事業を展開する企業を紹介する。

第1回は、TwitterやFacebookといったSNSの膨大なテキストデータや画像データの解析を通じ、世界中で起こる様々なイベントについて、リアルタイムのアラートを可能としたDataminr(データマイナー)を紹介したい。

多くの金融機関が導入、未然のリスク検知に活用

Dataminrは2009年に設立、これまで累計$577Mの資金調達を完了、現在の企業評価価値は約$1.6Bとされており、いわゆるユニコーン企業としての評価を得ている。投資家には、フィデリティ投信やゴールドマン・サックス証券、クレディ・スイス、米国で未上場株式の流通プラットフォームを運営するEquityZen等の金融機関が名を連ねる。

Dataminrは、自らが提供するサービスを「Real-Time Information Discovery」と称する。SNSの膨大なテキストデータや画像データの解析によって、特定のイベントがニュースとして報道されるよりも早く、ユーザーへの通知を可能としている。実際のクライアントについては開示されていないものの、多くのセルサイド、バイサイドを中心とした金融機関が導入しているとされ、ユーザーは、事前に自身のポートフォリオや関心領域等を登録することによって、自身の業務や投資先に関連のあるアラートのみを受け取ることができる。

ディーゼルゲートのきっかけとなる自動車スキャンダルもアラート

Dataminrの企業サイトでは、これまでに実際に報道より早くアラートを挙げた事例が実績として掲載されているが、これが興味深い。2017年8月、フォルクスワーゲンがディーゼル車に不正排出ソフトウェアをインストールしていたことが発覚した。これはのちにダイムラー、BMW等も巻き込み、「ディーゼルゲート」として知られ、現在の欧州排ガス規制議論の発端ともなった一大スキャンダルへと発展するのだが、Dataminrは、マスメディアによるニュース報道の約4時間前には、自動車業界に関連する全てのクライアントに対して、リスクアラートを配信していたという。この他にも、2017年10月、韓国によるビットコイン規制について、ビットコイン価格急落の直前にアラートを発信した事例や、2017年12月、オーストリアのガス関連施設が大規模な爆発が発生、周辺国への供給が途絶えた際にも、ガス会社の公式発表の約1時間半前に、本件のアラートをユーザーに対して発信していたとしている。

Dataminrの企業サイトでは、これまでに実際に報道より早くアラートを挙げた事例が実績として掲載されているが、これが興味深い。2017年8月、フォルクスワーゲンがディーゼル車に不正排出ソフトウェアをインストールしていたことが発覚した。これはのちにダイムラー、BMW等も巻き込み、「ディーゼルゲート」として知られ、現在の欧州排ガス規制議論の発端ともなった一大スキャンダルへと発展するのだが、Dataminrは、マスメディアによるニュース報道の約4時間前には、自動車業界に関連する全てのクライアントに対して、リスクアラートを配信していたという。この他にも、2017年10月、韓国によるビットコイン規制について、ビットコイン価格急落の直前にアラートを発信した事例や、2017年12月、オーストリアのガス関連施設が大規模な爆発が発生、周辺国への供給が途絶えた際にも、ガス会社の公式発表の約1時間半前に、本件のアラートをユーザーに対して発信していたとしている。

SNS解析によるリスク検知は日本でも今後トレンドとなる見込み

技術的には、高度な自然言語処理技術と、画像診断技術が応用されているものと推察されるが、自然言語処理×SNS解析×金融領域という分野において、ユーザーニーズに真にフィットするサービスへと昇華されているといえるだろう。言語の障壁もあり、日本のSNS等はサービスに含まれていないと思われる。

日本においては、JX通信というスタートアップが同様のアプローチを用いた事業を展開している。顧客には多くの報道機関が名を連ねており、SNSの解析を通じていち早く情報を把握し事業へと活用するアプローチは、今後日本でもトレンドとなることが予測される。

※本週刊金融財政事情10月21日号掲載の弊社コラムを一部改訂して掲載しております。

【開催終了しました】第1回 Forecast Tech Conference 開催

~本イベントは終了いたしました~

Forecast Tech研究所では、2019年12月5日(木)、『第1回 Forecast Tech Conference ~ 将来予測を、明日からの仕事に活かす~』 を開催いたします。

第1回 Forecast Tech Conference 開催概要

グローバル化の進展とテクノロジーの進歩により、私たちを取り巻くビジネス環境は日々、複雑性を増しています。情報量が加速度的に増加するなか、事業環境を正確に見通して意思決定を行うことは難しく、その巧拙が企業の競争力の源泉となる時代が訪れました。

Forecast Techとは、「Forecast(予測)」と「Technology(テクノロジー)」から成り、
最新のテクノロジーによって様々な予測を行うサービス、企業群を意味します。

不確実性の高まる現代において、Forecast Techは、企業の意思決定を担ううえで必要不可欠な要素となるでしょう。

このイベントが、日本におけるForecast Techの幕開けとなることを願い、第1回Forecst tech Conferenceを開催する運びとなりました。

イベントの詳細については、下記のURLからご覧いただけます。

第1回 Forecast Tech Conference 開催概要

Forecst tech研究所の運営一同、皆様のご参加をお待ちしております。

ニュースから企業業績や経済の未来を予測するSaaS型AIサービス「xenoBrain」の仕組み

サービス概要

xenoBrain(ゼノブレイン)
予測対象: 企業業績、業界需要、素材価格
利用データ:ニュース、決算資料
利用事業者:事業会社経営企画、調達部門、営業企画、金融機関など
利用シーン:あらゆる企業評価・経済環境分析シーン
主要利用技術:自然言語処理

Forecast Tech研究所を運営する株式会社xenodata lab.が開発・運営する「ニュースから企業業績や経済の未来を予測する」xenoBrain とはどのようなサービスなのか、技術的な部分も含めてご紹介していきたいと思います。

xenoBrainとは?

 xenoBrainは、経済ニュースや決算情報に含まれる過去の経済事象の連関から企業の利益影響をAIが自動で分析し、業績予測を行うサービスです。世界中で毎日膨大なニュースがリリースされますが、AIを活用することで、そのニュースがどんなことを言っているか自動で抽出し、そこから発生する影響を予測しています。

 例えば、新たな通信規格として5Gサービスが始まるというニュースが出た時に、そのニュースが自社や競合企業にどのような影響を及ぼすかすぐにわかるでしょうか?5Gサービスが開始すると、データセンターの需要が高まる、データセンターの需要が高まると、光ファイバーの需要も伸びる。このように、膨大な経済ニュースを独自のAIで解析し、1つ1つの経済事象間の因果関係を特定することによって、ある事象が起きたとき、どのように経済や産業構造に影響を及ぼすのか、将来の予想に繋げるのがこのサービスです。

※プロダクトの詳細は動画でもご紹介しています、是非ご覧ください

どうやって将来予測を実現しているの?

 それを実現させているのが、特許取得済みの高度な自然言語処理技術であり、ゼノデータ・ラボのコアとなっている技術です。xenoBrain のニュース分析における自然言語処理では、ニュース記事の日本語文章の中から、経済事象に関する記述を情報抽出しています。この経済事象の抽出は、影響シナリオと結びつけるために、area (地域)、item(品目), element(エレメント), predicate(述語)といったラベルごとに、単語単位まで細かく特定する必要があります。 そのために、弊社独自の自然言語処理エンジンを開発、ニュース記事向けの高精度パターンマッチングをしています。

 これらの技術で過去10年間の膨大なニュース記事を解析し、文章から経済事象のつながりを構造化データに変換することで、経済ニュースの因果関係を可視化しています。また、もう一方で企業の決算資料の解析を行い、最新の情報から業績を左右するような要因(社内では「業績ドライバー」と言っています)を自動抽出する解析も行っており、両面で行っているニュース解析と決算解析を組み合わせる事で、今日起きたニュースがどのようなつながりで企業の業績にどのようなインパクトを及ぼすか、予測を実現しています。

今後の展開は?

①未上場企業、海外企業など解析対象の企業を拡大していきます
 来春には未上場企業40万社以上の企業信用調査レポートを解析対象に追加予定。業界初、未上場企業の将来動向を自動予測するサービスが実現します。

②ニュースが企業や経済に及ぼす影響を数値化
 現在は表記できていない、期間(短期・中期・長期)や確度の情報を追加し、より活用しやすい予測情報を提供します。

今後も進化を続けるxenoBrainにご期待ください!

投資信託の予測は可能なのか?最新テクノロジーで投資信託の資産運用を自動化するロボット投信株式会社にインタビュー!

右から、ロボット投信株式会社 代表取締役社長 野口 哲氏と、マーケティング・クオンツチーム マネージング・ディレクター 矢島 桐人氏

Forecast Tech企業インタビュー記事第二弾は、テクノロジーの力で投信回りの会社のオペレーションを良くする様々なサービスを提供する会社、ロボット投信株式会社が投信の予測サービスをリリースする可能性がある事をキャッチし、代表取締役社長の野口 哲氏と、マーケティング ・クオンツチームの マネージング・ディレクターの矢島 桐人氏(以下敬称略、お役職はインタビュー当時)にお話を伺いました。

注目サービス概要

ファンド・アナリティクス
解析対象:投資信託の値動きの理由を可視化
※値動きをシミュレーションできる新機能を開発中!
利用事業者:銀行個人部門
利用シーン:銀行窓口にて、個人投資家に投信の状況を説明
主要利用技術:投信データの統計数理分析×AWSなどクラウドベースのシステム構築

ロボット・レポート
解析対象:投資信託の運用結果を解析し、運用報告書などレポートを自動生成
利用事業者:投資信託運用会社
利用シーン: レポート作成業務を自動化する事で低い工数で正確なレポートを早く出すことが可能に
主要利用技術:投信専用CMS×AWSなどクラウドベースのシステム構築

―まずは、ロボット投信という会社について、何を実現する会社なのか教えてください

野口 投信回りの様々なオペレーションを良くするサービスを提供しています。その中でも主要なサービスが、銀行や証券会社といった販売会社の販売員向けに基準価額の変動要因分析を提供する「ファンド・アナリティクス」と、投資信託の月次レポートを自動作成するSaaSの「ロボット・レポート」です。銀行窓口業務や、投信を運用する会社の業務の効率化を行い、最終的には受益者への還元を目指し全員にメリットのある世界を目指しています。

 矢島 投信業界という話だと、運用会社であればアナリストやエコノミストがいて、様々な指標を見ながら分析・予測を行い、「この株・資産を買おう」という判断をし、投資信託を作り運用をしています。そして日本の場合だと投資信託は基本的に販売会社とよばれる銀行や証券会社が売る事になっていて、個人や機関投資家が投資信託を買います。我々は、金融リテラシーの低い個人投資家に対して投資信託の可視化を行い、販売会社のサポート、ひいては投信業界の発展に寄与したいと思っています。ファンド・アナリティクスはこのためのツールで、BtoBto Cの個人投資家向けのサービスになります。また、運用会社という意味では、運用レポート作成などといったオペレーションの自動化によって、予測や分析作業といった運用会社の価値の源泉に対する業務に多く時間を割けるようになってもらいたい、と考えています。それがロボット・レポートで、プロ向けのサービスです。

―基準価額の変動要因分析を提供するファンド・アナリティクスとは、具体的にはどのようなものでしょうか?

野口 投信の中身の値動きを明らかにしていくツールです。これは、過去の値動きを推計しているものなので、Forecast Techというより、むしろ逆側をいっているテックですね(笑)

矢島 投信は、一般の個人が、例えばトヨタ自動車の株と日産の株と、どちらが良いかどちらを買うべきかという事はわからなくても、運用会社のファンドマネージャーと呼ばれるプロに任せて投資が出来るというものです。それはそれで良い事なのですが、一方で株式売買の選定を他人任せにしてしまうので、ブラックボックスになってしまい、なぜ投信の基準価額が上がったのか下がったのか分からない、という状況を作ってしまいます。野口は以前からそこを可視化できるのではないかというアイデアを温めており、2年近く掛けようやく実現できたのがファンド・アナリティクスです。例えば投信の基準価額が下がっているときに、実は原資産は上がっているが、為替が下がっているだけだという事がわかったり、投資信託の透明化に貢献できています。

こちらが実際のファンド・アナリティクスの画面。サンプルでは国内外の債券を運用する「グローバル・ソブリン・オープン」の、3年間の基準価額の変動要因を分析している。基準価額を変動させた要因は、この投信の運用商品である「債券」に加え、「為替」、「分配金」、「信託報酬」に分解して可視化されている。投信の3年間の基準価額の変動は全体で見ると4,839円⇒4,902円と微増だが、通常はなぜそのような結果になったのかまでは投信購入者にはわからない。しかしこの画面を見ると、メインの運用商品である債券の運用成績が非常に良く、為替もプラスに働いており、分配金を出した事で、結果として基準価額が微増となっていることが分かる。

―どのような技術で、基準価格の内訳を出しているんですか?

野口 コアとなる計算部分については、テクノロジー部分はAWSを使用しているだけで、何か真新しい技術を活用しているわけではありません。しかし一般的には広く用いられるようになってきたAWSも金融業界ではまだ浸透しているとは言えず、こういった技術を少し取り入れるだけでも、(ブラックボックス化している投信の値動きを分かりやすく把握したいというお客様の)ニーズを満たすには十分と考えています。当たり前の話ですが、「お客様のニーズを満たすにはどうすればよいのか。どういうテクノロジーが使えるのか」を愚直に考えた点が、ファンド・アナリティクスがお客様に受け入れられている一番の要素だと思います。

投信の「将来の値動き」を確率的に表示する拡張機能を開発中!

―Forecast Techサービスについても開発されていると伺いました。詳しくお伺いできますでしょうか

野口 投資信託というものはただの箱であり、中に個別株や債券やコモディティが入っています。その中身を全て当てなくてはならないという意味では、投信の基準価額の動きを予測する事はできないと考えており、未来の予測を行う予定はありません。また話は少し逸れますが、投信を長期で保有しようという時に、1か月後の上がり下がりで運用していると複利効果が効かなくなるという背景があります。例えば年1%の利回りを365分の1すると1日あたりの利回りは少しにしかならないですが、35年たつと1.8倍くらいになっています。このような長期積立分散という投資ができるようになると、おそらく日本の投資信託のすそ野はもっと広がり、投機的なものではなく地に足のついた資産形成ができるようになると思います。

矢島 ファンド・アナリティクスを銀行の支店の方に利用してもらったときに、「説明のツールとしてとてもわかりやすいけど、次のアクションが取り辛い。どれそれの要因で上がったから、だから何なのか?売らずに保有し続けるようアドバイスすべきなのか、売って別の投信をお勧めすべきなのか」というフィードバックを数多くいただきました。前述の通り投信は様々な商品が入った箱なので値動きを当てるという事はできないと思っていますが、販売会社の販売の担い手のセールストークに貢献するような、将来的な値動きの可視化をサポートする「シミュレーション」ツールは出来るだろうと考えています。ファンド・アナリティクスのモデルをベースに、将来の投資信託の値動き確率的に表示する機能です。

実際に開発中の画面を見せていただいたところ、過去の値動きの延長に、将来の値動きの幅が雲のように示され、最も濃い部分は最も確率が高いことが視覚的にわかるようになっていました!

人間のエコノミストの考えをブレイクダウンし、期待リターンの予測を自動化するというチャレンジ

野口 現在開発中の機能は、コンプライアンスの観点から「今後上がります」などが言えないという事情もあり、投信の中身の一部、例えば一年後の日経平均の予測値や為替レートの値などを利用者がインプットして利用するものを想定しています。しかし、理論的には株価は利益×投資家の期待値で動きます。期待値というのは予測できないものですが、利益の予測は、例えば企業の業績や、基本的に国は企業の集合体になっているので、国の成長率から逆算して、日本の株価全体の成長率を分析するという手法があります。世界銀行やIMFが四半期に一度GDPの予測を出しており、人間のエコノミストはそのようなデータなどを用いて日本株全体の期待リターンを算出します。そしてそのエコノミストの算出した期待リターンを利用して、ポートフォリオの資産配分を決めたりするのですが、もしそのエコノミストの作業が自動化できれば、その後はもうブラックリッターマンなど決まった手法があるので、全て自動化できます。  

 今出している主力サービス「ロボット・レポート」ですと、定型的な仕事がロボットに置き換わるというもので、それ自体は色んな所であると思いますが、エコノミストが行う期待リターンの予測業務を自動化するという事はチャレンジングで面白いと思っています。予測のやり方には決まったルールがあるので、そのルールに基づいて予測を算出すれば自動化する事が可能だと思っています。

―エコノミストの考えをブレイクダウンして、同じ計算をシステムで自動化するという事ですか。それはすごいですね!

野口 僕たちがすごいというよりは、素材となるデータを作ってくれているような日本銀行やIMF、世界銀行などがものすごい労力をかけて統計を作成し、結果をフィードしてくれている仕組みがあり、自動でデータを取れる仕組みがあって実現するので、彼らがすごいんです。昔、ホームページが無かったころはどうしていたのかなと思いますね笑

―最後に、新しい分野Forecast Techについての今後の期待など、一言いただけますでしょうか。

野口 困難なforecastへの挑戦こそテクノロジーの役目であり、資産運用の常識に囚われない新しい可能性を様々な形で探っていきたい

筆者コメント
 少数超精鋭のクオンツ、エンジニア部隊を持つロボット投信社の、金融工学に精通したお話を伺う事ができました。近い将来エコノミストの業務もテクノロジーの力で置き換わっていくのでしょうか?同社の今後のForecast Techの展開が楽しみです!ロボット投信株式会社 野口様、矢島様、大変ありがとうございました!

将来予測『Forecast Tech』サービスが熱い!背景と事例を解説

なぜ今次々とForecast Techサービスが登場するか

Forecast Techとは、元々「Forecast」と「Technology」を掛け合わせた造語であり、テクノロジーによって何らかの予測を行うことを指します。

テクノロジーの急速な発展を背景に、Forecast Tech分野は海外では一足先に大きな盛り上がりを見せており(海外ではPredictive Analysisと呼ばれる)、経営、医療、犯罪等、あらゆるシーンで実用化が進んでいます。

Forecast Techに挑戦する企業たち

Forecast Techは、利用者側からすると漠然とした期待感がある一方で、

・将来予測そのものはすごいけど、本当に当たるのか?

・予測の根拠は?信頼に足るものなのか?

・予測結果が間違っていたら誰が責任を負うのか?

といった不安感から導入に至らないケースもあるのが現状です。

AIによる将来予測は、基本的に膨大な過去データの分析を基に行われます。

例えば、商品の需要予測を行う場合には、在庫数、欠品状況、気象、店舗立地等のデータと販売データの関係性を解析し、現在の情報に適用することで、将来の商品需要を予測します。

この分析を可能にしている技術が、将来予測の材料となる”データ”に関する3つの分野「収集、貯蔵、解析」の進歩です。

5GやIoT等による収集や、データの貯蔵技術等、AIが将来予測を行うための技術は日々進歩しており、今後も予測精度が上がると見込まれます。

米国では既にスタンダードになっているForecast Tech分野

AI活用の先進国である米国では、次々に将来予測サービスが社会実装されており、今やなくてはならないサービスとなっています。

ユニコーン企業である”Dataminr”はSNSの膨大なテキストデータや画像データの解析を通じ、ニュース報道よりも早く顧客に届けることで、災害対応やサプライチェーン改善、ビジネスチャンス発掘等に役立てられています。

例えば、地域災害に関するSNS発信から防災や調達先の切替に向けた行動を促す、経済指標に影響を与える政治トピックを政治家のSNSから拾い上げる等、シーンを選ばず顧客に価値ある予測情報を届けるサービスが、ユニコーンとしての評価につながっています。

Google傘下でAI技術の最前線を走る”Deepmind”は、電力需給予測の他、近年ヘルスケア分野に注力し、画像診断やたんぱく質の解析による病気発症予測を行っています。

患者の医療情報取扱い等、克服すべき課題は多いものの、多くの疾患を防げる可能性があるため大きく期待されています。

他にも、犯罪予測が司法で活用される等、使用の是非すら問われかねないサービス導入も進んでおり、AIの活用方法を試行錯誤しながら、享受していく意識の高さが伺えます。

日本におけるForecast Tech

総務省らによる調査「日本企業のAI・IoTの導入状況(2019年)」によると、日本の大企業のAI導入率は10%台と遅れていますが、Forecast Tech分野等を中心に大手企業による積極的な投資や、研究開発が進んでいます。

Sonyが2019年6月に発表した予測分析ツール「Prediction One」は、データがあれば『誰でも簡単に』予測分析ができる点に特徴があり、注目を集めています。

予測結果に対する予測理由も同時に提供するとのことであり、手軽に将来予測を利用できるサービスとして、幅広い業種に使われる可能性を秘めています。

スタートアップ企業でも、予測技術を開発するための資金調達が増加や、AI人材の流入が増えており、株価予測、商品需要予測、設備の故障予測等、既に実用化に至ったサービスも増えており、社会や企業の価値創出に役立ち始めています。 日本でも、今後将来予測が役立ち始めることで、価値が徐々に理解され、日々の生活・事業活動に浸透し、大きな進化を遂げていくことが期待されます。

先端技術を磨き、あらゆるマーケットの予測を実現するデータサイエンス集団:AlpacaJapan株式会社の予測サービスを掘り下げる

Forecast Tech企業インタビュー記事第一弾は、データサイエンスの多様な技術を駆使し、プロ向けにマーケット予測を提供する会社、AlpacaJapan株式会社(以下、「AlpacaJapan」) CPO/Head of R&Dである北山 朝也氏(お役職はインタビュー当時)に、AlpacaJapanが実現する予測サービスの詳細について語っていただきました。

提供サービス概要

Alpaca Forecast
予測対象:主要為替通貨ペア
利用事業者:機関投資家、事業会社、ヘッジファンド
利用シーン:為替トレーディング
主要利用技術:ディープラーニング、機械学習

Alpaca Radar
予測対象: 日本株、米国株、海外債券
利用事業者:機関投資家、ヘッジファンド
利用シーン:資産運用における収益獲得、アセットアロケーション調整
主要利用技術:ディープラーニング、機械学習

―まずはAlpacaJapanという会社について、何を実現する会社なのか教えてください

 データサイエンス技術を使ってマーケットの予測をする会社です。ディープラーニングが主ですが、ディープラーニングだけにこだわらず、ありとあらゆる最新技術を使って予測しています。

 サービスの提供先は主に機関投資家で、ビジネスモデルは大きく2つ分けてあります。一つはお客様と共同研究をする形で技術を提供するモデル、もう一つは自社が作ったシグナルを月額で提供するモデルで、「Alpaca Forecast」と「Alpaca Radar」という2つのサービスがあります。Alpaca Forecastは、5分~60分以内のプライスを予測するサービスで、Bloomberg端末上App storeと呼ばれるアプリストアやWebで提供しています。常に画面を開きっぱなしにして使っていただくイメージですね。Alpaca Radarは最長3ヶ月の様々なアセットの予測をするサービスで、今は毎朝のメールでレポートを提供しています。

ヘッジすべきリスクを収益のチャンスへ変換

― シグナルは主にどのようなシーンで利用されているのでしょうか

  Alpaca Forecastは為替のプロップトレーダー(自己売買)以外にも細かいニーズがあり、為替ヘッジのオペレーションのためなどにも使っていただいています。例えば元々100億円分のドルを購入したい場合購入タイミングを1時間ごとに10億円ずつなど均等にずらしていくことで、平均価格で購入するオペレーションをしていたが、Alpaca Forecastを導入する事で、タイミングを見定めて為替変換する事で収益につなげられるような事例もでています。

―どのような仕組みで予測を実現しているのですか?

 Alpaca Forecastは「ティック」、つまり1秒間に100回など非常に細かい粒度で発生する大量のプライスのビットとアスクのデータの分布や偏りを分析する事で需給を予測しています。技術的にはディープラーニングを使い、「こういうパターンが発生している時は上がる」というような需給の情報を学習し、値動きを予測しています。ニューラルネットワークとしては、画像認識で良く使うCNN(畳み込みニューラルネットワーク)技術を使い時系列用に応用しています。

世界中のグローバルアセットから、安定的な先行指数を自動選出して予測を算出

―次に長期予測サービス、Alpaca Radarについて教えてください

  Alpaca Forecastが5分~60分以内のプライスを予測するのに対し、Alpaca Radarは最長3ヶ月の様々なアセットの予測を対象にしています。具体的には日本株、米株、海外債券などですが、特に債券マーケットは株・為替マーケットより合理的に動くという印象を持っています。債券は債券先物などでトレードできますが、予測を使ったトレーディングで収益を追求するだけでなく、ポートフォリオに対するリスクヘッジとしての使い方なども多いです。債券予測は重要な基礎技術として特に磨きをかけています。

 仕組みとしては、世界中のあらゆるマーケットデータから、対象とする金利指数に対して安定的に動作する先行指数を探索し、予測モデルを自動的に構築するシステムを作っています。直近10年間で先行指数として最も安定的にワークしたものを選び、その効果を足し合わせて予測を作っています。

―予測精度を上げるためにはどんな事をされていますか?

 大量の仮説を立てて、一つ一つ潰すという事をしています。例えばティックデータもスプレッドやBID/ASKをどういう分布を仮定して学習させるか様々なアイディアがあります。値動きを学ばせるときに、モデルに対して「どういう風にマーケットを見るべきか」という仮定を置かなければいけません。本来、ディープラーニングの強みはそのような仮定を置かずとも仮定自体を発見するという強みがあるのですが、マーケット予測におけるディープラーニングでは、画像認識などと違いデータ量が少ないため、どのように世界を切り取るかという仮定を人間が考えないといけません。

世界一の技術があればビジネスモデルは後からついてくる

―今後の方向性について教えてください

 今後は予測モデルのブラッシュアップと、未来に向けてありとあらゆるアセットを予測できる技術を揃えていくというのが我々の第一目標ですね。世界一の技術を持ってしまえばビジネスモデルはあとからついてくるという思想で、技術を磨く事に全ベットしているような会社です。

―最後に、新しい分野Forecast Techについての今後の期待など、一言いただけますでしょうか。

 Forecast Techには、元々予測できているものについて、さらに精度を高めていくものと、元々予測出来ていないものが予測可能になるものと2種類あります。事業会社は、「これを予測できたら本当に利益になる」という分野を抱えているのではないかと思いますが、その分野の予測が実際に出来てきたときに、内部オペレーションの整備に数年かかるような場合もあり、「長い目で見たときにこの事業が発展していくので、先行投資しておこう」という判断をする事はトップのビジョンが必要で、実際とても難しい事だと思いますが、そのような取り組みにチャレンジする会社がどれくらい出てくるかがForecast Techが盛り上がるかどうかのポイントになると思います。

筆者コメント
データサイエンスの力でありとあらゆるアセットの高精度な予測に挑むAlpacaJapan社から、予測を実現する技術部分など深いお話を伺う事ができました。「ビジネスモデルは後からついてくる」と、ひたすら技術に磨きをかける同社の予測テクノロジーに今後も注目していきたいと思います。AlpacaJapan 北山様、大変ありがとうございました!