投資信託の予測は可能なのか?最新テクノロジーで投資信託の資産運用を自動化するロボット投信株式会社にインタビュー!

右から、ロボット投信株式会社 代表取締役社長 野口 哲氏と、マーケティング・クオンツチーム マネージング・ディレクター 矢島 桐人氏

Forecast Tech企業インタビュー記事第二弾は、テクノロジーの力で投信回りの会社のオペレーションを良くする様々なサービスを提供する会社、ロボット投信株式会社が投信の予測サービスをリリースする可能性がある事をキャッチし、代表取締役社長の野口 哲氏と、マーケティング ・クオンツチームの マネージング・ディレクターの矢島 桐人氏(以下敬称略、お役職はインタビュー当時)にお話を伺いました。

注目サービス概要

ファンド・アナリティクス
解析対象:投資信託の値動きの理由を可視化
※値動きをシミュレーションできる新機能を開発中!
利用事業者:銀行個人部門
利用シーン:銀行窓口にて、個人投資家に投信の状況を説明
主要利用技術:投信データの統計数理分析×AWSなどクラウドベースのシステム構築

ロボット・レポート
解析対象:投資信託の運用結果を解析し、運用報告書などレポートを自動生成
利用事業者:投資信託運用会社
利用シーン: レポート作成業務を自動化する事で低い工数で正確なレポートを早く出すことが可能に
主要利用技術:投信専用CMS×AWSなどクラウドベースのシステム構築

―まずは、ロボット投信という会社について、何を実現する会社なのか教えてください

野口 投信回りの様々なオペレーションを良くするサービスを提供しています。その中でも主要なサービスが、銀行や証券会社といった販売会社の販売員向けに基準価額の変動要因分析を提供する「ファンド・アナリティクス」と、投資信託の月次レポートを自動作成するSaaSの「ロボット・レポート」です。銀行窓口業務や、投信を運用する会社の業務の効率化を行い、最終的には受益者への還元を目指し全員にメリットのある世界を目指しています。

 矢島 投信業界という話だと、運用会社であればアナリストやエコノミストがいて、様々な指標を見ながら分析・予測を行い、「この株・資産を買おう」という判断をし、投資信託を作り運用をしています。そして日本の場合だと投資信託は基本的に販売会社とよばれる銀行や証券会社が売る事になっていて、個人や機関投資家が投資信託を買います。我々は、金融リテラシーの低い個人投資家に対して投資信託の可視化を行い、販売会社のサポート、ひいては投信業界の発展に寄与したいと思っています。ファンド・アナリティクスはこのためのツールで、BtoBto Cの個人投資家向けのサービスになります。また、運用会社という意味では、運用レポート作成などといったオペレーションの自動化によって、予測や分析作業といった運用会社の価値の源泉に対する業務に多く時間を割けるようになってもらいたい、と考えています。それがロボット・レポートで、プロ向けのサービスです。

―基準価額の変動要因分析を提供するファンド・アナリティクスとは、具体的にはどのようなものでしょうか?

野口 投信の中身の値動きを明らかにしていくツールです。これは、過去の値動きを推計しているものなので、Forecast Techというより、むしろ逆側をいっているテックですね(笑)

矢島 投信は、一般の個人が、例えばトヨタ自動車の株と日産の株と、どちらが良いかどちらを買うべきかという事はわからなくても、運用会社のファンドマネージャーと呼ばれるプロに任せて投資が出来るというものです。それはそれで良い事なのですが、一方で株式売買の選定を他人任せにしてしまうので、ブラックボックスになってしまい、なぜ投信の基準価額が上がったのか下がったのか分からない、という状況を作ってしまいます。野口は以前からそこを可視化できるのではないかというアイデアを温めており、2年近く掛けようやく実現できたのがファンド・アナリティクスです。例えば投信の基準価額が下がっているときに、実は原資産は上がっているが、為替が下がっているだけだという事がわかったり、投資信託の透明化に貢献できています。

こちらが実際のファンド・アナリティクスの画面。サンプルでは国内外の債券を運用する「グローバル・ソブリン・オープン」の、3年間の基準価額の変動要因を分析している。基準価額を変動させた要因は、この投信の運用商品である「債券」に加え、「為替」、「分配金」、「信託報酬」に分解して可視化されている。投信の3年間の基準価額の変動は全体で見ると4,839円⇒4,902円と微増だが、通常はなぜそのような結果になったのかまでは投信購入者にはわからない。しかしこの画面を見ると、メインの運用商品である債券の運用成績が非常に良く、為替もプラスに働いており、分配金を出した事で、結果として基準価額が微増となっていることが分かる。

―どのような技術で、基準価格の内訳を出しているんですか?

野口 コアとなる計算部分については、テクノロジー部分はAWSを使用しているだけで、何か真新しい技術を活用しているわけではありません。しかし一般的には広く用いられるようになってきたAWSも金融業界ではまだ浸透しているとは言えず、こういった技術を少し取り入れるだけでも、(ブラックボックス化している投信の値動きを分かりやすく把握したいというお客様の)ニーズを満たすには十分と考えています。当たり前の話ですが、「お客様のニーズを満たすにはどうすればよいのか。どういうテクノロジーが使えるのか」を愚直に考えた点が、ファンド・アナリティクスがお客様に受け入れられている一番の要素だと思います。

投信の「将来の値動き」を確率的に表示する拡張機能を開発中!

―Forecast Techサービスについても開発されていると伺いました。詳しくお伺いできますでしょうか

野口 投資信託というものはただの箱であり、中に個別株や債券やコモディティが入っています。その中身を全て当てなくてはならないという意味では、投信の基準価額の動きを予測する事はできないと考えており、未来の予測を行う予定はありません。また話は少し逸れますが、投信を長期で保有しようという時に、1か月後の上がり下がりで運用していると複利効果が効かなくなるという背景があります。例えば年1%の利回りを365分の1すると1日あたりの利回りは少しにしかならないですが、35年たつと1.8倍くらいになっています。このような長期積立分散という投資ができるようになると、おそらく日本の投資信託のすそ野はもっと広がり、投機的なものではなく地に足のついた資産形成ができるようになると思います。

矢島 ファンド・アナリティクスを銀行の支店の方に利用してもらったときに、「説明のツールとしてとてもわかりやすいけど、次のアクションが取り辛い。どれそれの要因で上がったから、だから何なのか?売らずに保有し続けるようアドバイスすべきなのか、売って別の投信をお勧めすべきなのか」というフィードバックを数多くいただきました。前述の通り投信は様々な商品が入った箱なので値動きを当てるという事はできないと思っていますが、販売会社の販売の担い手のセールストークに貢献するような、将来的な値動きの可視化をサポートする「シミュレーション」ツールは出来るだろうと考えています。ファンド・アナリティクスのモデルをベースに、将来の投資信託の値動き確率的に表示する機能です。

実際に開発中の画面を見せていただいたところ、過去の値動きの延長に、将来の値動きの幅が雲のように示され、最も濃い部分は最も確率が高いことが視覚的にわかるようになっていました!

人間のエコノミストの考えをブレイクダウンし、期待リターンの予測を自動化するというチャレンジ

野口 現在開発中の機能は、コンプライアンスの観点から「今後上がります」などが言えないという事情もあり、投信の中身の一部、例えば一年後の日経平均の予測値や為替レートの値などを利用者がインプットして利用するものを想定しています。しかし、理論的には株価は利益×投資家の期待値で動きます。期待値というのは予測できないものですが、利益の予測は、例えば企業の業績や、基本的に国は企業の集合体になっているので、国の成長率から逆算して、日本の株価全体の成長率を分析するという手法があります。世界銀行やIMFが四半期に一度GDPの予測を出しており、人間のエコノミストはそのようなデータなどを用いて日本株全体の期待リターンを算出します。そしてそのエコノミストの算出した期待リターンを利用して、ポートフォリオの資産配分を決めたりするのですが、もしそのエコノミストの作業が自動化できれば、その後はもうブラックリッターマンなど決まった手法があるので、全て自動化できます。  

 今出している主力サービス「ロボット・レポート」ですと、定型的な仕事がロボットに置き換わるというもので、それ自体は色んな所であると思いますが、エコノミストが行う期待リターンの予測業務を自動化するという事はチャレンジングで面白いと思っています。予測のやり方には決まったルールがあるので、そのルールに基づいて予測を算出すれば自動化する事が可能だと思っています。

―エコノミストの考えをブレイクダウンして、同じ計算をシステムで自動化するという事ですか。それはすごいですね!

野口 僕たちがすごいというよりは、素材となるデータを作ってくれているような日本銀行やIMF、世界銀行などがものすごい労力をかけて統計を作成し、結果をフィードしてくれている仕組みがあり、自動でデータを取れる仕組みがあって実現するので、彼らがすごいんです。昔、ホームページが無かったころはどうしていたのかなと思いますね笑

―最後に、新しい分野Forecast Techについての今後の期待など、一言いただけますでしょうか。

野口 困難なforecastへの挑戦こそテクノロジーの役目であり、資産運用の常識に囚われない新しい可能性を様々な形で探っていきたい

筆者コメント
 少数超精鋭のクオンツ、エンジニア部隊を持つロボット投信社の、金融工学に精通したお話を伺う事ができました。近い将来エコノミストの業務もテクノロジーの力で置き換わっていくのでしょうか?同社の今後のForecast Techの展開が楽しみです!ロボット投信株式会社 野口様、矢島様、大変ありがとうございました!

先端技術を磨き、あらゆるマーケットの予測を実現するデータサイエンス集団:AlpacaJapan株式会社の予測サービスを掘り下げる

Forecast Tech企業インタビュー記事第一弾は、データサイエンスの多様な技術を駆使し、プロ向けにマーケット予測を提供する会社、AlpacaJapan株式会社(以下、「AlpacaJapan」) CPO/Head of R&Dである北山 朝也氏(お役職はインタビュー当時)に、AlpacaJapanが実現する予測サービスの詳細について語っていただきました。

提供サービス概要

Alpaca Forecast
予測対象:主要為替通貨ペア
利用事業者:機関投資家、事業会社、ヘッジファンド
利用シーン:為替トレーディング
主要利用技術:ディープラーニング、機械学習

Alpaca Radar
予測対象: 日本株、米国株、海外債券
利用事業者:機関投資家、ヘッジファンド
利用シーン:資産運用における収益獲得、アセットアロケーション調整
主要利用技術:ディープラーニング、機械学習

―まずはAlpacaJapanという会社について、何を実現する会社なのか教えてください

 データサイエンス技術を使ってマーケットの予測をする会社です。ディープラーニングが主ですが、ディープラーニングだけにこだわらず、ありとあらゆる最新技術を使って予測しています。

 サービスの提供先は主に機関投資家で、ビジネスモデルは大きく2つ分けてあります。一つはお客様と共同研究をする形で技術を提供するモデル、もう一つは自社が作ったシグナルを月額で提供するモデルで、「Alpaca Forecast」と「Alpaca Radar」という2つのサービスがあります。Alpaca Forecastは、5分~60分以内のプライスを予測するサービスで、Bloomberg端末上App storeと呼ばれるアプリストアやWebで提供しています。常に画面を開きっぱなしにして使っていただくイメージですね。Alpaca Radarは最長3ヶ月の様々なアセットの予測をするサービスで、今は毎朝のメールでレポートを提供しています。

ヘッジすべきリスクを収益のチャンスへ変換

― シグナルは主にどのようなシーンで利用されているのでしょうか

  Alpaca Forecastは為替のプロップトレーダー(自己売買)以外にも細かいニーズがあり、為替ヘッジのオペレーションのためなどにも使っていただいています。例えば元々100億円分のドルを購入したい場合購入タイミングを1時間ごとに10億円ずつなど均等にずらしていくことで、平均価格で購入するオペレーションをしていたが、Alpaca Forecastを導入する事で、タイミングを見定めて為替変換する事で収益につなげられるような事例もでています。

―どのような仕組みで予測を実現しているのですか?

 Alpaca Forecastは「ティック」、つまり1秒間に100回など非常に細かい粒度で発生する大量のプライスのビットとアスクのデータの分布や偏りを分析する事で需給を予測しています。技術的にはディープラーニングを使い、「こういうパターンが発生している時は上がる」というような需給の情報を学習し、値動きを予測しています。ニューラルネットワークとしては、画像認識で良く使うCNN(畳み込みニューラルネットワーク)技術を使い時系列用に応用しています。

世界中のグローバルアセットから、安定的な先行指数を自動選出して予測を算出

―次に長期予測サービス、Alpaca Radarについて教えてください

  Alpaca Forecastが5分~60分以内のプライスを予測するのに対し、Alpaca Radarは最長3ヶ月の様々なアセットの予測を対象にしています。具体的には日本株、米株、海外債券などですが、特に債券マーケットは株・為替マーケットより合理的に動くという印象を持っています。債券は債券先物などでトレードできますが、予測を使ったトレーディングで収益を追求するだけでなく、ポートフォリオに対するリスクヘッジとしての使い方なども多いです。債券予測は重要な基礎技術として特に磨きをかけています。

 仕組みとしては、世界中のあらゆるマーケットデータから、対象とする金利指数に対して安定的に動作する先行指数を探索し、予測モデルを自動的に構築するシステムを作っています。直近10年間で先行指数として最も安定的にワークしたものを選び、その効果を足し合わせて予測を作っています。

―予測精度を上げるためにはどんな事をされていますか?

 大量の仮説を立てて、一つ一つ潰すという事をしています。例えばティックデータもスプレッドやBID/ASKをどういう分布を仮定して学習させるか様々なアイディアがあります。値動きを学ばせるときに、モデルに対して「どういう風にマーケットを見るべきか」という仮定を置かなければいけません。本来、ディープラーニングの強みはそのような仮定を置かずとも仮定自体を発見するという強みがあるのですが、マーケット予測におけるディープラーニングでは、画像認識などと違いデータ量が少ないため、どのように世界を切り取るかという仮定を人間が考えないといけません。

世界一の技術があればビジネスモデルは後からついてくる

―今後の方向性について教えてください

 今後は予測モデルのブラッシュアップと、未来に向けてありとあらゆるアセットを予測できる技術を揃えていくというのが我々の第一目標ですね。世界一の技術を持ってしまえばビジネスモデルはあとからついてくるという思想で、技術を磨く事に全ベットしているような会社です。

―最後に、新しい分野Forecast Techについての今後の期待など、一言いただけますでしょうか。

 Forecast Techには、元々予測できているものについて、さらに精度を高めていくものと、元々予測出来ていないものが予測可能になるものと2種類あります。事業会社は、「これを予測できたら本当に利益になる」という分野を抱えているのではないかと思いますが、その分野の予測が実際に出来てきたときに、内部オペレーションの整備に数年かかるような場合もあり、「長い目で見たときにこの事業が発展していくので、先行投資しておこう」という判断をする事はトップのビジョンが必要で、実際とても難しい事だと思いますが、そのような取り組みにチャレンジする会社がどれくらい出てくるかがForecast Techが盛り上がるかどうかのポイントになると思います。

筆者コメント
データサイエンスの力でありとあらゆるアセットの高精度な予測に挑むAlpacaJapan社から、予測を実現する技術部分など深いお話を伺う事ができました。「ビジネスモデルは後からついてくる」と、ひたすら技術に磨きをかける同社の予測テクノロジーに今後も注目していきたいと思います。AlpacaJapan 北山様、大変ありがとうございました!